約 1,746,096 件
https://w.atwiki.jp/ljksscenario/pages/249.html
【クラス】 ライダー 【真名】 ジャイロ・ツェペリ@ジョジョの奇妙な冒険 【属性】 秩序・善 【ステータス】 筋力D 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A 【クラス別スキル】 対魔力:D 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。 騎乗:C 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、 野獣ランクの獣は乗りこなせない。 【固有スキル】 鉄球の回転:B 肉体を動かさずに掌にある物体に「回転」を加える特殊技術。 鉄球を回転させてその振動であらゆる事象を引き起こす。 心眼(真):B 修行・鍛錬によって培った洞察力。 において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理” 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。 【宝具】 『黄金長方形の回転(スティール・ボール・ラン)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人 自然界に存在する黄金長方形を見ることで、鉄球の回転の真の力を引き出す。 レンジ内に完全な自然界の黄金長方形(葉や生物、雪の結晶など)が存在する間、 「鉄球の回転」スキルのランクを2ランク上昇させる。 『無限螺旋を越えた技術(ボール・ブレイカ―)』 ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:1人 黄金長方形による馬の走行に、黄金長方形の無限の回転を加える技術。 そのエネルギーは人型のヴィジョンで形成され、このヴィジョンの攻撃は次元の壁さえも突き抜ける。 事実上防ぐ術はないが、鉄球は完全なる真球でなければならず、少しでも損傷し「楕円球」などでは十二分に力を発揮できない。 『波を視る右目(スキャン)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:- 『聖人の遺体』を有していない為、この宝具は失われている。 【Weapon】 無銘・鉄球 金属を加工することで作る事ができる。 ヴァルキリー ライダーの愛馬。 【解説】 本名はユリウス・カエサル・ツェペリ。 ネアポリス王国出身の法務官であり、処刑人と医者を代々務めるツェペリ家が編み出した技術「鉄球の回転」を行使する。 たまたま密会の現場に勤めていただけで「国家叛逆罪」として裁かれた靴磨きの少年マルコの処刑にどうしても納得がいかず、スティール・ボール・ラン優勝による「国王の恩赦」によってマルコを救う為にレースに参加した。 しかし、第7ステージでの大統領との対決中、一手の差により死亡する。 【サーヴァントの願い】 特になし
https://w.atwiki.jp/wiki6_byakumu/pages/834.html
ジャイロ=トリッシュ=アルベスター 人間 男 42歳 身 長 165cm 体 重 60kg 3サイズ 書きません 一人称 余 二人称 そち、貴様。名前を特定する場合は呼び捨て 性 格 優柔不断で弱気な性格 話し方 かなり時代がかった口調 ジャイロ民主主義人民共和国総書記。 表向きは彼がジャイロの代表となっているが、実質はガイル=ヴェスティがその権限を握っている。無能ではないが、あまり自分の意見を通すことのない性格で、ガイルの強引な意見に常に押し負けている。 生来の弱気な性格のため間違いだと気づいていても言い出せないでいる。 彼には娘がいるが、その娘は彼とは正反対の性格のため、さらに肩身が狭くなっているという。 ※非戦闘員のため、ステータスはありません
https://w.atwiki.jp/hondadream04/pages/303.html
スキル合成テーブル整理 合成結果 合成スキル1 種類 合成スキル2 種類 D C ジャイロボール = 迫力 精神力 + スナップ 変化球 = 球際 精神力 + クロスファイア 制球力 = 度胸 精神力 + 筋トレ 体力 = 俊足 走力 + 筋トレ 体力 = 必中 バント + アイソメトリック 体力 = 鉄壁 守備力 + クロスファイア 制球力 = 休養 体力 + 仕事人 バント = 回復 体力 + 太っ腹 精神力 = 背筋 体力 + ブレーキ 変化球 = 腹筋 体力 + 空振り三振 球速 = ホップ 球速 + 体重移動 巧打力 = ノビ 球速 + のらりくらり 変化球 = 快腕 球速 + コーナーワーク 制球力 = 翻弄 変化球 + 目立ちたがり 精神力 = 翻弄 変化球 + 走り込み 体力 = 翻弄 変化球 + スナップ 変化球 = 老獪 変化球 + タッチアップ 走力 = 老獪 変化球 + 仕事人 バント = 老獪 変化球 + 空振り三振 球速 = 緩急 変化球 + のらりくらり 変化球 = 配球 制球力 + クロスファイア 制球力 C C = マイペース 精神力 + 高回転 球速 = 目立ちたがり 精神力 + クロスファイア 制球力 = 自信家 精神力 + のらりくらり 変化球 = 太っ腹 精神力 + 投げ込み 体力 = ベースランニング 走力 + 高回転 球速 = スクイズ バント + スピードガン 球速 = プッシュバント バント + 走り込み 体力 = バックトス 守備力 + 安定感 制球力 = 走り込み 体力 + 高回転 球速 = 走り込み 体力 + のらりくらり 変化球 = アイソメトリック 体力 + 快速球 球速 = アイソメトリック 体力 + 駆け引き 制球力 = 筋トレ 体力 + コーナーワーク 制球力 = 空振り三振 球速 + のらりくらり 変化球 = 揺れ球 変化球 + 揺れ球 変化球 = 揺れ球 変化球 + クロスファイア 制球力 = クロスファイア 制球力 + 駆け引き 制球力 B B = いぶし銀 バント + 高負荷筋トレ 体力
https://w.atwiki.jp/fullgenre/pages/307.html
【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール】 1 008 私がトーキョーに送ってあげる ◆xmy4xBA4UI 深夜 【平賀才人】 3 028 ルイズに届けこの想い! 才人ザオリクを唱える。の巻 ◆xmy4xBA4UI 黎明 044 幸せの星 ◆ew5bR2RQj. 黎明 072 Ultimate thing ◆EboujAWlRA 早朝 【タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)】 3 033 弱肉強食の理 ◆KKid85tGwY 深夜 058 カッキーン☆ 悪魔の怪人軍団! ◆EboujAWlRA 黎明 074 悪徳の栄え ◆y6S7Lth9N6 早朝
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/579.html
爆炎の使い魔 漂う土煙!これはルイズによって起こされたもの! 召喚の儀だというのに、性懲りもなく爆発を起こした少女、ルイズ!! しかし、しかし!だからこそ現れたのではないだろうか! 爆発こそが「それ」を象徴する能力なのだからッ!! 時間は少し遡る。 幽霊の出る小道で主と引き離された「それ」は‘どこでもない場所‘を彷徨っていた。 体はバラバラ、ひび割れて無残な姿だ。 主を失ったスタンドはどうなるのか・・・それはわからない。 おそらくは消えていくのであろう。 だが!「それ」の場合は消えなかった! 主がとどまり続けるのと同様に(もちろん「それ」はそのことを知らないが)、 「それ」もまた新たなる世界でとどまり続けるのだ! さあっ!迎えの光がやってきた! 光に飲み込まれていく「それ」は自らの体が修復されていくのを感じていた・・・。 土煙が晴れ、そこに一つのヴィジョンが佇んでいた。 それを見たルイズは喜びに打ち震えていた。自らが召喚した使い魔がその優美な姿を見せていたからだ。 猫と髑髏が融合したかのような顔、筋骨隆々たる体、そして何者をも寄せ付けない気高い威圧感! そのどれをとっても貴族たる自分に相応しい。 「嘘だろ・・・ゼロのルイズが成功しやがった・・・。」 「イ、インチキに決まってる!!」 「そうだ!爆発に紛れて何とかしたんだ!」 プツンッ!ルイズの方から何かが切れた音がした。 「黙りなさい・・・。」 「何だよ!図星なモンだから焦ってんだろ。」 「黙りなさい、と言ったのが聞こえなかったの・・・? このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール・・・。 そのような姑息な真似は!一切!!していないッ!!! これは正真正銘!私が召喚した!私の使い魔よッ!!!!!」 To Be Continued → 目次
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7813.html
前ページゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~ 右京の話と、別の世界から来た人間である証拠として提示した携帯電話の月が一つしかない写真を見た二人の反応は、対照的だった。 コルベールは、目を輝かせて写真に見入り、続いて携帯電話をよく見せてほしいと頼んできた。そして、携帯電話にディテクト・マジックをかけたり、いろいろな方向から見たり、 いろいろなボタンを押して出てきた他の写真や動画、音楽などに「おお、これは素晴らしい!」などと、しきりに感動していた。 一方のオスマン氏は、机に肘をついて手を合わせ、目を閉じていた。何か考えごとをしているようであった。やがて目を開くと、興奮冷めやらぬコルベールに声をかけた。 「コルベールくん。しばらく席を外してくれ」 てっきり異世界の話を聞けると思って、わくわくした様子で待っていたコルベールは、しぶしぶ部屋を出て行った。 コルベールが出て行ったあと、オスマン氏は重々しくため息をついて、言葉を漏らした。 「これで二人目、か…」 「二人目? 僕以外にも、異世界からきた方がいるのですか?」 いささか興奮した右京をなだめると、オスマン氏はゆっくりと語りだした。 「今から三十年ほど前のことじゃ…森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。そのとき、ひとりの男が私を救ってくれた。彼は、見たことのない武器を二本持っていた。 その一本でワイバーンを吹き飛ばすと、その場に倒れてしまった。見ると、ひどい怪我を負っておった。私は彼を学院に運び込み、手厚く看護した」 「その方は、今どこに?」 「残念ながら、看護の甲斐なく、亡くなってしまった。私は、彼が使った一本を遺体とともに墓に埋めて、もう一本を『破壊の杖』と名づけ、宝物庫にしまいこんだ。命の恩人の形見としてな…」 オスマン氏は、遠い目をして続けた。 「死ぬ間際、彼はベッドの上でうわ言のように繰り返しておったよ。『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』と。そのときは、怪我で錯乱しているのかと思っておったが… 今にして思えば、彼は君と同様、本当に違う世界から来たのかもしれんな」 「その方がどのようなお姿をしていたか、憶えていらっしゃいますか?」 右京の言葉を受け、オスマン氏は紙を取り出し、記憶を思い起こしながら絵を描いていった。完成した絵を右京に見せる。 右京は、我が目を疑った。 そこに描かれていたのは、第二次世界大戦期のアメリカ陸軍と思われる服装をした男性だった。その手には、二本の筒らしきものを持っている。これが『破壊の杖』だろう。形状や時期的に考えると、おそらく対戦車砲の類だろうか。 いずれにせよ、これで一つのことが明らかになった。 「この絵の人物は、国籍と時代こそ違いますが、僕と同じ世界からやってきた人間です。間違いありません」 右京は断言した。 彼は、オスマン氏にこれまでにない確かな手応えを感じていた。キュルケの紹介は間違っていなかった。 あえてルイズと別れてオスマン氏に会ったのは無駄ではなかった。 オスマン氏はおそらく帰る方法を、少なくとも手がかりを持っているのではないか。 右京は、期待に胸を膨らませて、核心に入った。 「この方は、いったいどのようにしてこの世界へ来たのでしょうか? 僕のように、誰かがこの世界へ召喚したのでしょうか?」 右京の気持ちを察したのだろう、オスマン氏は再びため息をつき、申し訳なさそうに言った。 「わからん。ひどい怪我で、まともに話ができる状態ではなかったからのう。彼がどんな方法でこの世界へやってきたのかは、最後までわからなんだ」 「そうですか…」 声の調子こそ穏やかだったものの、さすがの右京も、オスマン氏の返答には落胆を隠しきれないようだった。色よい反応に期待を寄せていただけに、手がかりがあっという間に消えてしまったことへの失望もひとしおであったろう。 自分と同じ世界の人間が、何らかの方法でこのハルケギニアにやってきていたのだから、来た方法さえわかれば帰る方法も調べれば見つけられると思っていた。 だが、結局その米軍兵士は何も語ることなく世を去ってしまっていた。知る術は、いまや完全に失われてしまったのだ。 オスマン氏が何も知らないも同然の状態では、最初の質問で自分を疑わしい目で見ていたコルベールに聞いても無駄であろう。 「力になれんですまんの。魔法学院の学院長といっても所詮はこの程度。己の不見識を恥じるばかりじゃ…」 オスマン氏は力なく謝った。 「いいえ、とんでもございません。僕の話を信用していただけただけで十分です」 「ありがとう。君がどういう理屈でこの世界に来たのか、私のほうでも調べてみよう。だが、あまり期待はせんでくれよ」 「ありがとうございます」 「まぁ、見つからなかったとしても『住めば都』ということもある。なんなら、嫁さんも探してやろう」 右京は、その言葉には答えなかった。オスマン氏は場を明るくするつもりで言ったのだろうが、今の右京には笑うに笑えない冗談だった。 重い部屋の空気に、しくじりを悟ったオスマン氏が話題を変えようと目を動かすと、コルベールが持ってきたスケッチが目に入った。そして、さっきまで右京のルーンのことで話をしていたことを思い出した。 オスマン氏は、話すかどうか逡巡したが、どうせいつかは本人には話さなければならないことであるし、今までの言動からみるに、この男ならば冷静に受け止めるだろうと考え、話すことを決意した。 「君の左手のルーン…」 「ええ。これについてもぜひお聞きしたかったのです。コルベール先生がこれを『珍しい』とおっしゃっていたのが気になったので、僕なりにこのルーンがどういう意味を持っているのかを考えてみました」 「そうか…それで、君なりに考えて、何かわかったのかね?」 オスマン氏は、右京の言い方が気になって、尋ねた。 「はい。このルーンの字形は、ゲルマン共通ルーンのものとほぼ同じです。それを対応するラテン文字に変換すると、“Gandalf”――“ガンダルフ”と書かれていることまではわかりました」 右京は、懐からノートとペンを取り出すと、上に左手のルーン文字を、その下に対応させるようにラテン文字を書き、それをオスマン氏に見せた。 「なんと…! 君は、ルーンを読めるのか?」 オスマン氏は、魔法の知識など何もないはずの右京がルーンを読めるなどとは思いもしなかったので、驚愕した。 「ですが、僕が知っている“ガンダルフ”は、イギリスの作家J・R・R・トールキンの小説『ホビットの冒険』『指輪物語』に登場する魔法使いの基になった、北欧神話に登場する魔法を使う妖精の名前か、1970年代に人気を博したレザーブランドの名前くらいしかありません。 この世界での“ガンダルフ”には、どのような意味があるのでしょうか?」 オスマン氏は小さく唸った。 この男は、自分が考えていた以上に豊富な知識と、それらを的確に繋ぎ合わせる聡明さ、そして自身がおかれた異常な状況にも対処できる冷静さを持ち合わせているようだ。 見立ては正しかった。これならば『ガンダールヴ』のことを話しても問題はないだろう。 ややあって、オスマン氏は口を開いた。 「どうやら、君に隠し立てする意味はなさそうじゃな…。わかった、お教えしよう」 オスマン氏は静かに語り始めた。 「実は君が来る直前まで、わしはコルベールくんと君のルーンのことを話し合っておったのじゃ。君が考えているとおり、そのルーンは特別な使い魔のルーンじゃ」 「特別な使い魔…」 右京は、オスマン氏の言葉を繰り返しながらも口は挟まず、暗に続きを促した。 オスマン氏が、机から書物とコルベールのスケッチを出して続ける。 「これは、最も偉大なメイジである始祖ブリミルが使役した伝説の使い魔『ガンダールヴ』の印じゃ。始祖ブリミルは強力な魔法を持っていたが、その力ゆえに、呪文を唱える時間が長かった。詠唱時間中のメイジは無力じゃ。 そこで、詠唱中に自らの体を守るために用いたのが『ガンダールヴ』なのじゃ」 「なるほど。主の呪文詠唱の時間を守ることに特化した使い魔だったのですね」 右京の言葉に、オスマン氏が頷く。 「そのとおりじゃ。『ガンダールヴ』の姿かたちの記述はないが、伝えられるところによれば、あらゆる武器を使いこなし、並のメイジでは歯が立たぬほどの力を持ち、千人の軍隊を一人で壊滅せしめたそうじゃ」 オスマン氏はそこで言葉を切り、息をついた。右京の様子を見る。 右京は、視線を下に落としていた。頭の中で手に入れた情報を整理しているようだ。 やがて、「一つ、よろしいでしょうか」と、右京が指を立てて質問を求めた。 「始祖ブリミルとは、どういった存在なのでしょうか?」 オスマン氏によると、始祖ブリミルは本名を「ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ」といい、ハルケギニアでは神と並んで崇拝される伝説の偉人だという。ハルケギニアとは別の世界からやってきたともいわれ、失われた系統・虚無の魔法を扱い、 『ガンダールヴ』をはじめとする四人の使い魔を従えていた。 そして、死期が近づくと、その強大な力を三人の子どもと一人の弟子に、指輪と秘法という形で分け与えたとされる。現在ハルケギニアに存在する四つの国、トリステイン、アルビオン、ガリア、ロマリアそれぞれの王家は、始祖ブリミルの力を受け継いだ四人の子孫だという (ちなみに、ゲルマニアは複数の都市国家が集まってできた国なので、始祖ブリミルとの関係はない。そのため、ゲルマニア皇帝は他国の王よりも格下に見られている)。 右京は、始祖ブリミルは自分の世界でいうところの釈尊やイエス・キリスト、ムハンマドのような存在と理解した。 「このルーンに、そのような意味があったとは…。どうやら、僕の懸念は正しかったようですね」 「懸念?」 右京の独白の意味をはかりかねて、オスマン氏が問うた。 「はい。僕が一刻も早くあなたにお会いしたかった理由は、たとえ帰る方法がわかったとしても帰れなくなってしまうという懸念を抱いたからです」 「どういうことかね?」 右京は、指を三本立てた。 「きっかけは、僕とミス・ヴァリエールの周りで起きた三つの特別な出来事です」 オスマン氏に促されて、今度は右京が語り聞かせる立場になった。 右京が、左手の人差し指を立てた。眼鏡の奥の目が鋭く光った。 「一つ目は、先ほども言いましたが、昨日コルベール先生が僕のルーンを見て『珍しい』とおっしゃって、スケッチをしておられたことです。他の生徒さんの使い魔にはそのようなことはしておられなかったようなので、気になりました。 現に、僕に刻まれたルーンは、この世界では伝説とされる『ガンダールヴ』のものでした」 そこまで言ってから、右京はオスマン氏に質問を投げかけた。 「オスマン先生。突然の質問で申し訳ないのですが、学院としては、ミス・ヴァリエールにどのような評価をしておられたのですか?」 「ミス・ヴァリエール? ふむ…座学は優秀じゃが、実技は、代々優秀なメイジを輩出した公爵家の出であることを差し引いても、可すらつけがたいというか……こう言ってはなんじゃが、無能というか…」 オスマン氏は非常に言いにくそうにしながらも、ルイズに対する評価を正直に答えた。 「級友の方々も同じ評価を彼女に下し、“ゼロのルイズ”と呼んでいました。その理由は、基本的な魔法すら成功させられず、爆発を起こしてしまうから。そうですね?」 「うむ。そのとおりじゃ…」 「僕が見た限りでも、ミス・ヴァリエールは校舎へ帰るときに『フライ』を使わずに徒歩であったり、部屋の施錠も鍵を使っていたりと、爆発を恐れて積極的に魔法を使おうとはしませんでした。そして今朝は、『錬金』の魔法を使おうとして爆発を起こしました」 本人がいないとはいえ、主に対して身も蓋もない言い方をする使い魔に、オスマン氏は面食らった。 右京はここで、指を二本立てた。 「二つ目は、その『失敗』と見なされている爆発です」 「と、いうと?」 「メイジが魔法に失敗すると爆発するのであれば、ミス・ヴァリエールへの評価にも納得できますが、それなら学院内に爆発の跡があったり、被害を抑える措置がなされていてもよさそうなものです。 ですが、そのようなものは見当たりませんでした。普通はメイジが魔法に失敗した場合は、なんの現象も起こらないそうですねえ」 「……!」 「にもかかわらず、なぜかミス・ヴァリエールだけは魔法を使おうとすると爆発させてしまう。この二つの結果には無視できない大きな落差があります。彼女の爆発現象を単純に『失敗』といってしまうことに、僕は違和感を覚えました」 「むう…そう言われれば…」 右京の説明を聞いたオスマン氏は、目から鱗が落ちる思いだった。自分たちは、ルイズがまともにコモン・マジックすら扱えないという欠点しか見えていなかったが、考えてみればそういう見方も確かに成り立つ。 右京が指を三本立てた。話はいよいよ佳境に入るようだ。 「そして三つ目。その『失敗』ばかりのミス・ヴァリエールが使い魔召喚の儀式で、前例のない人間を召喚し、契約に成功したことです」 オスマン氏は、右京が言わんとするところがわかってきたようだった。右京に確認するように口を挟んだ。 「つまり、君はこう言いたいのじゃな? 君の左手に刻まれた『ガンダールヴ』のルーン、ミス・ヴァリエールが起こす爆発、そして前代未聞の人間である君の召喚と契約…これらはすべて繋がっていると…」 「はい。我々…というよりミス・ヴァリエールの周りで、これだけ特別な出来事が起こっているのは、偶然とは思えません」 右京が、オスマン氏の指摘に肯んじた。 「じゃが、仮にそうだとしても、メイジとしては決して有能とはいえぬ彼女と契約したただの平民にすぎない君が、なぜ『ガンダールヴ』になったのか。それがわからん。君はそこをどう考えておるのかね?」 問われた右京は、「これはあくまで僕の推測ですが」と前置きして、話し始めた。 「ミス・ヴァリエールの起こす爆発は、彼女の極めて特殊な魔法の才能の片鱗なのではないでしょうか」 「特殊な才能?」 「先ほどお話いただいた『ガンダールヴ』の伝説の中で、あなたは『千人の軍隊を一人で壊滅せしめた』と、『ガンダールヴ』に『一人』という単位をお使いになっていました。姿かたちの記述はないとのことですが、 仮に『ガンダールヴ』が人間だったとしたら…」 「…! まさか…」 オスマン氏の表情がこわばった。 さすがは魔法学院の学院長というべきか、右京の思わせぶりな説明から結論を察したようだった。しかし、その結論はオスマン氏にとっては信じがたいものだった。 そんなオスマン氏を意に介することなく、右京は話を続ける。 「『ガンダールヴ』が、失われた系統・虚無の魔法を扱った始祖ブリミルの使い魔であったこと、そして四系統の魔法を扱えないミス・ヴァリエールが、人間の僕を『ガンダールヴ』にしたこと。 それらを考え合わせたとき、僕の中にある可能性が浮かびました」 「き、君は…ミス・ヴァリエールが……」 オスマン氏の体が震えていた。その両目は、今にも飛び出さんばかりに見開かれている。 動揺のあまり喉は渇き、声はかすれ、言葉がうまく出てこなかった。 右京は、オスマン氏の目を見すえて言った。 「ミス・ヴァリエールは、始祖ブリミルと同じ、虚無の系統を扱うメイジなのではないか――僕は、そう考えています」 右京の結論は、オスマン氏も話を聞く中で行き着いてはいたが、口にするにはあまりにもおそれ多いものであった。だから、右京の口からそれを聞かされたとき、オスマン氏は改めて衝撃を受けることになった。 思わず天井を仰ぐ。深い嘆息が漏れる。 いつも飄々としたオスマン氏しか知らないミス・ロングビルが見ていたなら、さぞかし驚いたであろう。 オスマン氏はしばらく黙りこくっていたが、やがて顔を下ろすと、右京に「失礼」と声をかけ、『ディテクト・マジック』を使った。この魔法は、対象が持つ、あるいはかけられている魔力を探知することができる。 結果は……右京はなんの魔力も持っていない、普通の人間であった。 「やはり、ただの平民か…」オスマン氏が声を漏らした。 オスマン氏がこのような行動に出たのは、右京の説明が、途中までコルベールがオスマン氏に力説していたこととほぼ同じだったからであった。だが、碩学として知られるコルベールも、ルイズが始祖ブリミルと同じ虚無の魔法を扱えるのではないか、 ということまでは言及していなかった。 それに加えて、右京がルーンを読めるということがオスマン氏をして、右京はメイジなのではないかという疑念を抱かせたのだった。 「どうされました?」気遣わしげな顔をする右京に、オスマン氏は静かに語りかけた。 「懸念…と最初に言っておったな。それは、どういうことかね?」 「ミス・ヴァリエールが伝説の再来ではないか――その推測が浮かんだとき、もしそれが正しかった場合、我々がどうなるかを考えました」 「それで?」 「もし本当に始祖ブリミルの再来であったとしたら、それをいつまでも隠し通しておくことは不可能です。遠からず公になる日がくるでしょう。そうなれば、王室が放っておくはずはありません。 国内の政争や国家間の外交上の切り札として祭り上げられ、利用されることは容易に予測できます。 そこまで行くと、たとえ帰る方法が見つかったとしても、帰るどころではなくなってしまうでしょう。ですから、そうなる前に、帰る方法を確保しておきたかったのです」 「確かに…。虚無のメイジと『ガンダールヴ』などという格好のオモチャが、宮廷で暇を持て余しているボンクラ貴族どもの手に渡れば、またぞろ戦を引き起こそうとか、ろくでもないことを考えるじゃろうな。 そうなれば、君たちに自由はなくなる」 「大きな力を手に入れれば、それを使わずにはいられない。どの世界でも、人間のそのような弱さは、変わらないものなのかも知れませんねえ」 右京が、わずかに憂いを帯びた声で、オスマン氏に同意した。 「君、このことはまだ誰にも…?」 「はい。お話ししたのは、学院長先生だけです」 「それならよかった。余計な混乱を招かぬためにも、決して口外はせんでくれ。君の主、ミス・ヴァリエールにもじゃ」 「わかっております。そう言われる可能性もあると思いましたので、ミス・ヴァリエールには先に食堂へ行っていただいて、一人で参りました」 言うまでもなかったか。本当に頭のいい男だ。 オスマン氏は、目の前の紳士の、ベテラン教師すら及ばない恐るべき洞察力と推理力に舌を巻くとともに、細かいところまで予測して行動する聡明さに感心した。 「スギシタウキョウくん」オスマン氏は立ち上がると、右京の手を握った。 「突然この世界に連れてこられ、帰る方法もわからない。さぞ困惑しておることじゃろう。さっきも言ったが、私も学院長として、君が帰還できる方法を調べるつもりじゃ。その代わりといってはなんじゃが…」 右京は黙ってオスマン氏の話を聞いていた。その表情は、柔和な笑みをたたえていた。 「どうか君には使い魔として、ミス・ヴァリエールを助けてやってほしい。あの娘は公爵家の名を背負った責任感からくる重圧と、魔法をまともに扱えぬ屈辱と劣等感との板ばさみで苦しんでおる。だがこればかりは教師でもどうにもできぬ。 彼女には、君のように積極的に肯定してくれる、頼れる人間が必要なのじゃ。君は信頼に値する人間じゃ。勝手なことを言っておるのは承知の上じゃが、よろしく頼む…!」 オスマン氏は、握った手を放さぬまま、右京に頭を下げた。 「わかりました。微力ながら、ミス・ヴァリエールの使い魔として、主を守るために全力を尽くすことをお約束します」 右京は穏やかな、しかし力強い声で承諾した。 「ありがとう…。私はいつでも君の味方じゃ。『ガンダールヴ』よ」 オスマン氏は、コルベールにも事情を話し、右京が帰れる方法を探す協力をさせることを約束してくれた。コルベールならば、嬉々として快諾してくれるに違いない。 「ありがとうございます。非常に助かります」と右京が感謝を述べたとき、扉がノックされる音が響いた。 「わたしです、オールド・オスマン。まもなく午後の授業が始まります。三年生への特別講義の時間ですが…」 ミス・ロングビルだった。オスマン氏がはっとなった。 「おお、もうそんな時間か! 君と話しこんでいて、すっかり時間を忘れてしまっておった。すまんのう。昼食を食べそびれてしまったな」 「いえ、心配はご無用です。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。では、失礼いたします」 丁寧に礼を述べ、右京は学院長室を退室した。外でずっと待っていたらしいミス・ロングビルとコルベールにお詫びと礼を述べると、右京は学院長室を後にした。 帰る方法は結局わからなかったが、学院長の協力を取り付けたという意味では、右京にとって十分な収穫があった。それを思えば、空腹感など安いものだ。 そんなことを思いながら廊下を歩いている右京に、声をかけたものがあった。 「あら…? ウキョウさん?」 右京に話しかけたのは、メイドの格好をした素朴な感じの少女だった。カチューシャでまとめた黒髪がかわいらしい。 「おや、シエスタさんでしたか」 右京がシエスタ微笑んだ。どうやら二人は互いを見知っているようだ。 「どうかなさいました?」 「いえ、大したことではありません。話に花を咲かせて、昼食の時間に遅れてしまっただけです」 「まあ。それじゃ、お腹が空いてるんじゃありませんか?」 「お気になさらず。好奇心がうずくと他のことを忘れてしまうのが、僕の悪い癖で…」 そう言い残して去ろうとする右京を、シエスタが引き止めた。 「私についてきてください」 シエスタの申し出を無下に断るのも失礼だと考え、右京はおとなしくシエスタの後についていくことにした。 前ページゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1591.html
いきなりルイズの部屋に現れたアンリエッタ「王女」は、 あれだけ周囲を警戒してこっそりと来たのにも拘らず、ルイズと大声で雑談を始めてしまった。 もちろんセッコは完全無視で。 寮だから両隣の部屋に人いるんだけどなあ。 それ以前にまだ廊下に人通る時間だし。こいつも脳にカビ生えてんのか。 つーか居辛いことこの上ねえ。 「あー・・・ルイズよお、外行っていいかなあ」 「ダメよ。」 言うと思ったぜ。 「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら?」 アンリエッタが初めてオレの存在に気づいたみてーだ。 じゃあ最初の探知っぽい魔法は何だったんだよ。 「お邪魔?どうして?」 「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?いやだわ。 わたくしったら、つい懐かしさにかまけて、とんだ粗相をいたしてしまったみたいね。」 ルイズが微妙な顔で言い返す。 「いえ姫さま、邪魔なんてことは全然。こいつはわたしの使い魔ですよ。」 「使い魔?これ、人じゃないんですか?」 「多分人だとは思いますけど、使い魔です。」 「ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」 「わりと頼りになりますよ。姫さま。」 「そ、そう。」 そんな何ともいえない会話は延々と続いた。 もうついていけねえ、寝てやろうか。 さすがにそれはまずいかなあ。 セッコが苦悩していると、突然アンリエッタの口調が変化した。 「ああ、ルイズ・・・」 わざとらしいほどに大きなため息をつく。 「姫さま?!」 ルイズがわざとらしく大げさに驚く。 「わたくしは、ゲルマニアに嫁ぐことになったのですが・・・」 更にため息は繰り返される。 「ゲルマニアですって!あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」 大げさ度アップ。 「そうよ、でも、仕方がないの。同盟を結ぶためなのですから。」 そしてアンリエッタは、ハルケギニアの政治情勢をルイズに説明しはじめた。 アルビオンの貴族たちが反乱を起こし、今にも王室が倒れそうなこと。 反乱軍が勝利を収めたら、次にトリステインに侵攻してくるであろうこと。 それに対抗するために、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶことになったこと。 同盟のために、アンリエッタ王女がゲルマニア王室に嫁ぐことになったこと。 そして・・・ これはヤバい話なんてもんじゃねえ。 オレは聞いてないオレは聞いてないオレは聞いてない・・・ 毛布を頭まで被り、そっと部屋の隅へ移動。 しかし。 「セッコ、姫さまの御前よ。ちゃんと聞きなさい。」 「うう…わかったよお。」 畜生。 「そうだったんですか・・・」 ルイズが沈んだ声になっている。 あんまりいい話でないのは確かだが、仕事なら仕方ないんじゃねえのかな。 オレだってどうせならもっと強くて冷静な奴と組みたいけど選択肢ねえし。 「いいのよ、ルイズ、好きな相手と結婚するなんて、物心ついたときから諦めていますわ。」 「姫さま・・・」 「礼儀知らずのアルビオンの貴族たちは、トリステインとゲルマニアの同盟を望んでいません。 二本の矢も、束ねずに一本ずつなら楽に折れますからね。」 矢二本じゃあ束ねても折れるだろ。せめて三本。 「・・・したがって、わたくしの婚姻を妨げるための材料を、血眼になって探しています。」 「で、もしかして、姫さまの婚姻を妨げるような材料が?」 ルイズが顔を蒼白にして尋ねる。 「おお、始祖ブリミルよ・・・。この不幸な姫をお救いください・・・」 「言って!姫さま!一体、姫さまのご婚姻を妨げる材料って何なのですか?」 うばあああああお願い言わないで王女様おあああ、機密事項だよなあ?よな? しかし、セッコのかすかな期待は当然というべきか裏切られた。 「・・・わたくしが以前したためた一通の手紙なのです」 「手紙?」 「そうです。それがアルビオンの貴族たちの手に渡ったら、彼らはすぐにゲルマニアの皇室にそれを届けるでしょう。 どんな内容かは言えませんが、きっとゲルマニアとの同盟は反故になってしまうでしょう。」 ルイズは息せきって、アンリエッタの手を握った。 「一体、その手紙はどこにあるのですか?トリステインに危機をもたらす、その手紙とやらは!」 アンリエッタが首を振る。 「それが、実はアルビオンにあるのです。」 「えっ、それではもう・・・」 「いえ、手紙を持っているのは反乱勢ではありません。アルビオン王家のウェールズ皇太子です。そして・・・」 「そして?」 「遅かれ早かれ、ウェールズ皇太子は反乱勢に囚われてしまうわ!そうしたら、 あの手紙も明るみに出てしまう!そして破滅です!何もかも!」 ルイズが息をのんだ。セッコはうなだれた。 「では、姫さま、わたしに頼みたいことというのは・・・」 「無理、無理よルイズ!わたくしったら、混乱しているんだわ! 考えてみれば、貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」 セッコの表情がぱっと明るくなる。 うん、うんうんっ、友人にこんな討ち死に前提の命令なんてしねえよな。 よしッ!! 「何をおっしゃいます!たとえ地獄の釜の中だろうが、竜の顎の中だろうが、姫さまの御為とあらば、何処なりと向かいますわ! 姫様とトリステインの危機を、このラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、見過ごすわけにはまいりません! このわたくしめにその一件、是非ともお任せくださいますよう!」 ルイズはそう言いつつ、膝をついて恭しく頭を下げた。 げんなりしてセッコの頭が下がった。 目の前ではルイズとアンリエッタが延々と友情を確かめあいつつ任務の話をしている。明日の朝出発ってマジか。 行くこと自体はもうどうしようもねえ、だが馬で行くのは勘弁して欲しい。 そうだ、早くて快適な乗り物があるじゃねえか。 もし手伝ってくれるならそんな頼もしいことはねえ。そうしよう。 「ちょっと、話の途中よ。どこいくのセッコ」 ドアに手をかけたところで、ルイズに後ろから呼び止められる。 「明日の朝出発するんだよなあ?」 「そうだけど」 「ちょっと準備。」 「そう」 言いつつドアを開けて飛び出す。外の空気、うめえ! と、誰かにぶつかった。そいや足音は2つだったっけなあ。 「あっと、従者さんすまね。」 アンリエッタが振り返り口を開いた。 「いえ、ここには一人で来たはずですが・・・」 ならこれは誰だあ? 顔を見る。ルイズもドアから身を乗り出した。 「「・・・ギーシュ?」」 しかし、ギーシュはルイズとセッコを無視してアンリエッタの前に跪いた。 「姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せ付けますよう!是非!」 ルイズは微妙な顔でギーシュを見ている。 アンリエッタは首を捻っている。 セッコは代わりにギーシュがやってくれるならちょっとラッキー?と思った。 「グラモン・・・グラモン・・・ああ、あのグラモン元帥の?」 アンリエッタがギーシュに向き直った。 「そうです!息子でございます、姫殿下!」 そして恭しく一礼する。 「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」 なんだ、“も”かあ。期待はしてなかったけどよ。 「任務の一員にくわえてくださるなら、これはもう望外の幸せにございます」 「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。 ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュ・ド・グラモン。」 ギーシュは感極まった様子で打ち震えている。大丈夫かなあ。 戦力は一応増えた。 だが、一人増えたことにより、タバサに頼んで途中までシルフィードを使うという 楽かつ素早い作戦は、完全に失われてしまった。 確かオレの記憶によるとシルフィードの積載は3人が限界だ。 「結局馬かあ・・・。」 「何よセッコ。最初から馬だって言ってるじゃない。」 「うう。」 ルイズは表情を引き締めると、アンリエッタに再び顔を向けた。 「では、明日朝よりアルビオンに向かって出発いたします」 「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます。」 「判りました。以前幾度か旅行しておりますので、地理は大丈夫です」 「それは頼もしいですわね。あ、そうだわ。」 アンリエッタはルイズの机に座ると、何かを書き始めた。そしてぽつりと呟く。 「ああ、やはりわたくしは、自分に嘘はつけません。」 「いきなりどうなされました?姫さま?」 ルイズが怪訝な顔でアンリエッタを見る。もちろんオレも。 「な、なんでもありません。やだわたくしったら独り言なんて。」 そう言うと、更にもう1文をしたため、それに封をした。 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してあげてください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう。 それと、もし、もしですが、ウェールズ皇太子と連絡が完全につかない場合、これは焼き捨ててください。」 「判りました。この任務。絶対に成功させてみせますわ姫さま」 「ありがとう、ルイズ。それと、このお願いは公にできないので、 表立って何かをしてあげることができません。代わりと言ってはなんですが、この[水のルビー]をあなたに託します。 母君からいただいたものですが、もしお金が心配なら、売り払ってもらってもかまいません。」 アンリエッタは、自らの指から外した指輪をルイズに手渡した。 ルイズは深々と頭を下げ、それを指にはめた。 「この任務にはトリステインの未来がかかっています。 母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、あなた方を守りますように」 そう言い残すと素早くアンリエッタは去っていった。 さて、明日早いらしいし寝るかあ。 「あんなお願いを聞かなきゃならないなんて、貴族ってわかんねえな。」 「きっと永久に判らないわ、そういうもんなの。悪いけどセッコにも協力してもらうわよ」 「なんだ、オレが嫌がってんの知ってたのかよお。」 「わたしはあなたの主よ。馬鹿にしないで」 「・・・そうか。」 こういう命令、前もあったような気がするなあ。 ええと・・・あれは・・・なんかの秘密を・・・Zzz 部屋の壁に耳をくっつけ、一部始終ずっと聞いていたキュルケが呟いた。 「なんか、面白そうなことやってるじゃないの。」 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3479.html
第三部『NEUE ZIEL(新しき理想)』 その日…もとい、ここ数日ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは非常に不機嫌だった。 理由は、使い魔の不在にある。 朝食が終わってから一時間ぐらいすると出て行き、夜頃やっと帰ってくるのである。 それだけなら、当り散らすとこだが、用件がウェールズにあるとなると何も言えない分、さらに機嫌が悪くなっている。 おまけに、アンリエッタとゲルマニア皇帝の婚姻に際して、詔を作れと始祖の祈祷書と共に言い渡されたのだが 詩人的才能が枯渇しているらしく、全く湧き出てこない。 ベッドの上でう゛~と唸っても、使い魔は居ないし、相談できそうな相手も居ない為、余計だ。 で、その不機嫌の原因を作り出している元凶だが、部屋の中でウェールズとマザリーニを伴い難しい顔をしていた。 「…率直に聞かせて欲しい。君から見て、どういう目的があると思う?」 「ふむ…たかが使節訪問に一隻しか無い艦隊旗艦を持ち出すという事が考えられんな」 主人と同じように少し唸りつつ、紅茶を啜りながら答えるが場の空気は重い。 なお、宇宙攻撃軍はドズル中将がドズル・ブレンドなるオリジナルコーヒーを作り出した事もあり大半がコーヒー党であるが、無いので紅茶にしている。 味は良いので特に問題は無い。 普段は、今後どうするかなどの話し合い等で、こういう雰囲気ではないが今日は別だ。 アルビオンから大使が送られてくるというのだが、それに伴い艦隊が動員されるからだ。 なお、ウェールズに対する言葉遣いが変わっているのは、ウェールズ自身がもう王族ではないからいい、と言ってきたからという事。 「威圧ではありませんか?アルビオンの強大な艦隊戦力を見せ付けるという」 「一理あるがな…私が思うに、連中は使節と偽り実戦部隊を導入し、こちらと一戦交える腹ではないか?」 「馬鹿な…!?そんな破廉恥な行為を行うなど…!絶対にありえん!」 思わず立ち上がったマザリーニを一瞥したが、構わずに続ける。 「艦隊という物は動員するだけで物資を浪費する。先頃まで内乱があり、国内が纏まっていない時期に使節というだけで艦隊旗艦を派遣するとは思えんよ」 ジオン公国軍でいうならルナツーの哨戒にドロス級を動因するような物だ。 確かに、200メートル級戦艦なぞ威圧にはもってこいだが、燃費が悪すぎる。 「まさか、そんな…いや、彼らも貴族だ…そんな事は…ありえん」 多少狼狽しつつあるマザリーニを見て少しばかり辟易した。 有能だとは思うが、緊急の有事には役に立たないタイプだと判断したが 他に使えそうな人材と言えるべき人材がマザリーニしか居ないので少し順を追って説明する事にした。 「落ち着きたまえ枢機卿。とにかく、そう思う理由を聞いてからでも遅くはない」 「うむ…確か、奴らの戦略目的は『統一』と『聖地奪還』であったな」 「ああ、その通りだ」 「現在、他に存続する国家は、隣国のゲルマニア、中立を標榜しているガリア、宗教国家のロマリア そのどの国も、強大な航空戦力を持つアルビオンには単独では太刀打ちできない。そこで、ゲルマニアとの同盟があるわけだが…」 そこまで言って二人を見たが、異論は無さそうなのでそのまま続ける。 「戦略的な目的が『統一』であるならば、対抗戦力となり得る国同士の同盟を傍観しているだけというのも思えなくてな。 ギレン総帥やデラーズ閣下ならば、戦力を集結させられる前に各個撃破の対象にするだろうな。 無論、戦力が集中した所を纏めて叩くという手もあるが…アルビオンと二国の間にそれ程の戦力差はあるまい」 公国軍ですら二重三重に張り巡らせた情報網によって、限界ギリギリまでMSの優位性を隠しルウムで連邦軍を打ち破った。 それでも、国力が疲弊し『ジオンに兵無し』と言われた程である。 戦力差が無くなれば持久戦になり、先に根を上げるのは補給ルートを封鎖されやすいアルビオンだろう。 「無論、同盟を締結したとはいえ、ゲルマニアが増援兵力を送るのに時間は掛かるだろうが それなりの部隊を送るとなると時間もかかる上に、こちらに察知され防衛体制を整えられてしまうしな」 となれば、使節という目的で精鋭部隊を送り込め、油断してくれているこの機会が好機というところだ。 「ある程度国内へ進んだ所で奇襲攻撃を仕掛け、そのまま制圧部隊を送り込む。…というのが考えられるが、どうだ?」 「…確かにそうだ。奴らなら、そのぐらいはやりかねない」 「で、ではゲルマニアに増援要請を…」 ウェールズが肯定すると共に、ようやく事態が飲み込めたマザリーニだが、まだ話は途中だ。 「あくまで仮定にすぎん。…それで動いてくれるような相手でもなかろうしな」 ゲルマニアは有力貴族が集まった連合体のような物で皇帝の力は言うほど強くは無いと聞いた。 金で地位が買えるという拝金主義的…とまではいかないだろうが、それに近い物風潮がある国が仮定だけで動くはずは無い。 フォン・ブラウンのアナハイムと考えれば分かりやすいだろうか。 二面外交を行い常に有利な方に付こうとするかもしれないという事も想定しておかねばならない。 そんな戦力をアテにして作戦を組み立てれば、間違いなく破綻する。 なら、最初から数に入れない方が遥かにマシだ。 (さて…と、デラーズ閣下なら、どうなされるだろうかな) そう思うのも無理は無い。 ガトー自身はMS隊の総指揮を取っていただけの事はあり戦術家という側面を持ち合わせているが、戦略は専門外である。 星の屑にしても、デラーズという傑出した戦略家が居てこそ初めて成功した作戦だ。 無論、部隊の錬度が連邦より遥かに高かったというのもあるが、それだけでは圧倒的な物量を相手にできなかったはずだ。 「我が軍の主力は旗艦『メルカトール』を含めて旧式艦が多く…緊急時に集められる陸軍の数は2000程で… 報告によると、訪れるアルビオン艦隊は、旗艦の他に戦列艦だけでも十数隻、予想される地上戦力は3000程で竜騎兵も入れますと…」 「僕が言うのも何だが、アルビオンの竜騎兵は精鋭揃いだ」 「鎧袖一触とはこの事か…」 戦力を聞いて頭痛がしてきた。数、質、錬度共に劣っている。 しかし、どうにも選択肢が少なすぎる。 こちらから先制攻撃を掛けるわけにもいかず、敵の攻撃に対して反撃するという道しか残されていないのだ。 しかも、あくまで仮定であり、可能性が高いものの確実にあるというわけではないし、その証拠も無い。 満足な防衛体制を整えられるかどうかはマザリーニに任せるしかないが 鳥の骨と言われているだけあって、結構な数の貴族から嫌われているのである。 最悪、緊急時に召集できるだけの戦力で対応せねばならないが それで最初から戦うつもりで来た敵とやり合えるか、と問われれば『無理だ』としか答えようが無い。 「とにかく、戦力の分散を避け、対策と準備は怠らない事だ。悪いが、今のこの国の有様では一度侵攻されれば抗うだけの力はあるまい」 ここ数日、王宮に出入りする貴族を観察していたが、どれもこれもジャブローの連邦高官のような目をしている。 事なかれ主義。己の保身しか考えていないような輩が大半を占めていると見た。 占領されれば、そのような者は真っ先に懐柔され、反抗しようとする者達を率先して弾圧するという事は十分考えられる。 アルビオン側としても、その手を取れば憎悪の対象は懐柔された側に向けられるので恐らくそうなるだろう。 唯一、付け入る隙があるとすれば、こちらが攻撃に感付いたという事だ。 偽装敗走で敵が油断した所で、敵中枢に攻撃を仕掛けるという手があるが、奇襲を仕掛ける戦力が集まるかどうかはマザリーニの手腕次第だ。 とりあえず、まだ日はある。 その場は、マザリーニがアンリエッタにそれとなく知らせておくという事で纏まった。 正直な所、腐っているとしか形容のしようの無いこの国に、ここまで関わっているのは他ならぬウェールズの存在が大きい。 死のうとしていた所を無理矢理連れ出し、生かしたのだから付き合う責任がある。 かつての自分に対するデラーズのようなところだ。 そして、そのウェールズがトリステインを救おうとするのなら、同じように尽力する事に決めたし 何より、ウェールズと話していて分かったのだが、地球方面軍司令であったガルマ・ザビ大佐にどことなく似ているのだ。 連邦の白い悪魔を擁する木馬部隊と交戦し戦死した彼だったが、国民からは勿論、軍内でも人気は高かった。 まして、溺愛していると言っても過言では無いドズル中将の部下だったこの男も例外ではなく、ガルマに対しては好意を抱いていた。 言うなれば、ウェールズがどこまでやれるかというのを見てみたくなったのである。 もっとも、これを乗り切らなければ先が無いのだが。 なお、ウェールズは、客人という事で素性隠し王宮内に留まっているが ガトーはウェールズとアンリエッタによりマザリーニの理解は得ているが、他から見れば平民なので何度も正面切って王宮に入るというのは要らぬ疑念を呼ぶ。 したがって、行きは搬入される食材に紛れ、帰りはこの前ウェルダンデが掘った穴から出るという、プチ・スニーキング・ミッションである。 ダンボール箱があれば被っている。 道中も、2、3箇所回っているため馬でも時間が普通よりかかるが、普段から狭いMSの中で時を刻んでいただけあり、苦にはならない。 むしろ、何時もやっているトレーニング代わりだ。 いい汗かいて学院に戻ると、後ろから声をかけられた。 余談だが、こちらに来てから頭の上がらない相手が一人増えている。 その正体は、今後ろから声をかけてきてる少女だ。 「む…シエスタか。どうした」 「最近、何時もこの時間に戻ってくるから待ってたんですよ。その、お腹すいているんじゃないかと思ってあ、…いえ、済ませてるならいいんです」 とまぁ、召喚当初から、このように食料方面や家事方面で色々と支援して貰っているので、年下と言えど流石に頭が上がらないのである。 ただ、その目を何処かで見たような気はしていたが 黒髪、黒目という、かつての宿敵を彷彿とさせる顔立ちだったので、まぁそういう事だろうと、とりあえず納得はしている。 「…そうだな。頼む」 「良かった。じゃあ、厨房に来てくださいな」 馬飛ばしてきただけに、丁度いい頃合でもあったし、何より断ったりしたらもの凄く落ち込まれそうなオーラを出していたので受ける事にした。 普段、部下を持つ立場だけであっただけに、こういう細かいとこには気付いたりするのだが、こんな所で役に立つとは思わなかった。 「旨い」 まず、出た感想はそれだ。 「本当ですか。良かった」 「後で厨房の皆に礼を言っておかねばならんな」 普段の生徒、教師及び自分達の分まで作らねばならないのに、少々ズレた時間にも関わらず用意してくれたという事で出た言葉だが 後ろから別の人物の声が飛んできた。 「ああ、それな。シエスタが作ったんだ。お前さんが最近、毎日出て行くからって頼んできてな」 ここの料理長のマルトーだ。 軍人と料理人という違いはあるが、己の職務に関して信念を以って立ち働くという姿には共感を覚えており 最初こそちとアレだったが、前のギーシュやド・ロレーヌの件などで、マルトー以下厨房の面々とはかなり親しくなっている。 「そうか…見事」 軽い笑みを浮かべてそう言ったが、無論、世辞ではなく本心からだ。 『世辞はいい。アースノイドじゃあるまいし』と言ったぐらいである。不味ければ遠慮なく不味いと言っているはずだ。 その言葉に顔を赤くして手を振っていたシエスタだが、少しすると顔の前に銀のお盆をやって少し言いにくそうに話し始めた。 「あ、あの、今だから言いますけど、ガトーさんを最初に見た時、少し怖いなーって思ってたんですよ」 そう言って、気付いたようにさらに激しく手を振りながら、今はそんな事はないです!と言ったが、分からんでもないとは思う。 「軍人ってのはろくでもないのが多いからな。手前の出世のために簡単に人を踏み付けたりするのが殆どだ」 ガトーが属していた宇宙攻撃軍は、ドズル中将の訓令が非常によく行き届いている…というより、ドズル中将のあの顔で、そう言われればそうするしかない。 そのため、軍律は旧公国軍でも最も高かった。 デラーズ・フリートにしてもそうだ。 だが、シーマ海兵隊のような戦後に海賊行為をしていた部隊も存在する事は確かだ。 戦後でなくとも、軍隊という大規模な組織である以上、一般人に対して略奪などの犯罪を犯す者は必ず居る。 もっとも、軍令で人を殺す事と、個人で人を殺す事に何処に違いがあるのかと問われれば答えようが無いのも事実である。 「すまん…!」 だから、侘びの言葉が出た。 「お前さんが謝ってどうする。グラモンの小僧を修正した時なんざ、俺はこいつは違うと思ったさ!」 あの偉そうだった小僧が、今じゃ大分態度が良くなったもんよ。と付け加えてきたが、ガトーに言わせればまだまだだ。 個人的に、ジオン士官学校に入学して一から学んで欲しいところだが、まぁそれは無理というものだろう。 世界が違うというのもあるが、敗戦により士官学校も解体されているからだ。 「迂闊に褒めんようにな。あれは調子に乗りやすい」 もうすっかり部下扱いである。実際、302哨戒中隊に補充要員として送られてきた学徒兵も、ギーシュと同じぐらいの年齢だったため扱い方は心得ている。 とりあえず、一段落付いたのだが、この男的には、このままというのは非常によろしくない。 「何か礼をせねばならんな。私に出来る事であれば言ってくれ。手を貸そう」 「そんな、こんな事ぐらいで…」 「ホントお前さんは義理堅いやつだな。ますます気に入ったぞ俺は!」 何故だか分からんが、こっちに来てから妙に厨房が馴染む。 それこそ、MSに搭乗しているような感覚である。 一回死にかけたおかげで前世か何かの記憶の影響が出ているのかもしれない。だとしたら多分職業は『ただのコック』だ。 「そうだ。それじゃあガトーさんの国の事を聞かせて下さいな」 「おお、そいつは俺も聞きてぇな」 興味津々といった具合にシエスタが覗き込むように聞いて、少し間を置いてそれに答えたが…色々と凄い事になった。 「私の故国か…そう呼べる物は三年前に潰えてしまってな」 少し感慨深げにそう言ったが、正確にはそうではない。サイド3は依然として健在だ。 ただし、ジオン共和国としてであるが。 同じジオンの名を冠するとは言え、ジオン共和国とジオン公国は全くの別物だ。 連邦に従属する形の自治なぞ形骸もいいところである。 だからこそ、多くの公国軍の戦士達が終戦後もジオン公国再興のために戦ったのだ。 そういう意味では、ジオン公国という国家は潰えたと言ってもいい。 だが、国家はどうあれ、宇宙市民の独立というジオンの理想は受け継がれている。 ジオン公国からデラーズ・フリート。デラーズ・フリートからアクシズにと。そう受け継がれただけでも十分だ。 ふと、視線を前にやると、何故か知らんがマルトーとシエスタが泣いている。 マルトーに至っては漢泣きというやつだ。 「…急にどうした?」 「馬鹿野郎!祖国を失っても誇りを持ち続ける軍人!これが泣かずにいられるか!」 「ガトーさぁ~~ん。わらし達が居ますから、辛くなっだらいつでも来てくらはい~~」 漢泣きしながら今にも抱きついてきそうなマルトーと、同じく泣きながら腕に抱きついてきたシエスタを見て もしや、何か可哀想な人として見られているのではないかと疑念が沸いたが どうやら、心の底から本気で泣いているようなので、特に気にしないでおく事に決めたが、二人を見ていると何やら勘違いをしている事に気付く。 何かこう、最後の生き残りというように受け取られてしまったらしい。 アルビオンでの件もあり、そういう価値観の違いからなのだろうと思ったので一応の訂正はしておいたが、やはりカリウスらのようにはいかない。 今まで軍隊組織にドップリと浸かっていただけに少しばかり戸惑いがある。 要は、民間人とこういう場で対する事にそれほど慣れていないわけだ。さらに言うならこういうタイプと接するのは本邦初だったりする。 ここ4年の生活場所が月での潜伏期間を除けば、宇宙要塞『ソロモン』、デラーズ・フリート拠点『茨の園』という環境だったので無理も無いのだが。 多少は落ち着いたようだが、やはり、まだ何か極まっているのか、依然としてマルトーは漢泣き状態であった。 時間が時間なので、ルイズの部屋に戻ろうとしたが 正直言うと、ジオン軍人として、16の少女と同室ってのはどうよと思わんでもない。 どこぞの仮面つけた大佐さんなら喜びそうだが、そういう趣味は無い。 まぁ使い魔だから。と言われればそれまでである。 価値観の違いというものか。郷に入れば郷に従え。という古い諺も知っているだけに、馴染もうとしているのだが こればかりは、多少抵抗が無いわけでもない。 そんな事を思いながら扉に手をかけドアを開けると…目に入ってきたものは白い塊だった。 ボフン。という間の抜けた音が響いたが、そこは現役のMS乗り。 飛来物に対する反射神経は常人のそれよりも遥かに高い。 顔に手をやって防ぎ、その白い物の正体を見たが、ルイズ愛用の枕である。 「ぬう…手荒い歓迎だな」 枕を拾いながら、それが飛んできた方向を見たが、ベッドの上で機嫌悪そうにしていらっしゃる桃色を見たッ! 「どこ行ってたのよ」 口調が明らかに拙い。 詰み将棋の如く、答え方を間違えればルイズ火山大噴火に御座います。というやつだろう。 だが、それでも百戦錬磨の兵である。 これしきのプレッシャーなぞドズル中将に比べれば形骸もいいところだ。 あえて言おう、カスであると! 「言ったはずだ。用があるとな」 ひるみもせずありのまま答えたが、やはりというべきか、ますます機嫌が悪くなったようである。 「分かってるわよ!わたしが言ってるのは、ご主人様をほったらかしにして内緒で何やってるのかって事!」 ひどく単純な理由だったが、それだけにガトーの理解も早い。 そういう事か。と思ったが、事が事だけにそのまま言うわけにもいかない。 何せまだ確定した情報というわけでもないだけに、悪戯に不安を煽らんでもよかろう、と判断した。 「確か、アルブレヒト三世だったか。その件でな」 嘘は言ってはいない。アルビオンの艦隊が訪れるという話を聞く前には、婚姻の件の話もしていた。 「納得したか?」 う゛~と唸るルイズを後ろ目に軍服の詰襟を外しながら、椅子兼寝床に座り一息付く。 …が、言われた方はまだ機嫌悪そうだ。 ルイズも、壊滅的に空気が読めないわけではない。 人より読めないが、この場合はいくらなんでも言わんとしている意味は分かる。 ゲルマニアの皇帝の名前を出したからには、婚姻の件で出向いているのだろうと理解した。 つまり、アンリエッタとウェールズの事だ。 そりゃあ、死を覚悟したウェールズを半ば無理矢理トリステインまで亡命させてきたものの、その直後に婚姻である。 恋人同士だと知っているだけに、望んでいない婚姻がどれだけ辛いものかという事ぐらいは分かるのだ。 まぁ、それはそれ。 いくらそうでも、ルイズにとって使い魔が主人を放置して、他所に行くなど認められない事である。 でも、アンリエッタに関わっている事なので、直接文句たれる事もできない。 もっとも、この威圧感満載の軍人に普段ずけずけと遠慮なしに命令を言えるルイズも相当なタマではあるが。 しばらくすると諦めたようで大人しくなったが、唐突に口を開いた。 「…ねぇ、それ貸して」 それと言われたが、手にしているのは一つしかない。 普段は持ち歩いているが、さすがにここにいる時は外に出している物。 超高級品であるブルーダイヤモンドの事だ。 普段は特に意識していないが、この世界においては国宝クラスのブツである。 宝石としてだけなら、ルイズが貰った水のルビー以上の物だ。 貸すだけで機嫌が直るなら安いものだとして手渡した。 「これって凄く綺麗よね。蒼いダイヤなんて初めて見たけど、どうしたのよ?これ」 ベッドに寝ながら手の平でダイヤを弄んでいるルイズだったが、そう訊いてきた。 貴族だから、宝石なぞ珍しい物でもなかろうと思ったが、即座に思い直す。 「お前でも見るのは初めてか。…宇宙では珍しいからな」 宝石は基本的に地球原産である。 ソロモンやア・バオア・クーなど、元々鉱物資源採集用として運ばれてきた小惑星では、工業用の金属は豊富に取れたが、宝石などは滅多に出ない。 特にダイヤモンドは、隕石痕などの場所からしか採掘されない物質だ。 その事から、月面のクレーター痕にも存在するのではないかと言われていたが 今の所はクレーター痕を利用したフォン・ブラウンやグラナダから、そんな物が採れたなどという話は聞かない。 そもそも、宝石を手に入れられるような富裕層は地球に居残っているので 精々工業用に使われる人工宝石ぐらいで、宝飾品を目的とした物は宇宙に出回る事はあまり無かった。 特に公国の前身となるジオン共和国はUC.50年代の頃に連邦による経済制裁を受けているため 宝石は元より食料すら確保し難い状況に陥っていた事があるだけに余計顕著だ。 ジオン・ズム・ダイクンの元、月の企業体やコロニーの商工業組織からの協力を得ることで何とか乗り切ったものの これらの連邦の行動が、サイド3が他のサイドより連邦に対しての敵対心が大きい原因である。 「前にも言ったと思うが、ある方から譲り受けた物だ。…武人の鑑とも言える人で返しきれぬ恩義がある」 あのHLVが無ければ、奪取した02Aを宇宙へ運び出す事はできずに、星の屑は第一段階も達成できずに頓挫するはずだった。 作戦概要すら言う事もできなかったが、『作戦』という言葉一つで基地のMS全てを犠牲にして送り出してくれたのである。 言うなれば、星の屑が最終段階まで到達できたのはキンバライド基地のおかげであると言っても過言ではないのだ。 それを聞いてルイズが押し黙る。 今のガトーの口調からして、その恩義は相当な物だと判断できるからだ。 「…元の場所に帰りたいの?」 ルイズもいい加減ガトーの性格は掴んでいる。 義理堅いというか、もう行動理念のほとんどがそれで出来ていると。 だから、勝手に呼び出した自分を放って何処かに行くのではないかと思ったからそう訊いた。 「さて…どうだろうかな」 対してガトーであるが、その恩義のあるノイエン・ビッター少将はHLVを守るために戦死しているのである。 何より、志を無駄にしないためにも星の屑は成功させねばならなかったわけで 気になると言えば、今後、星の屑により宇宙の情勢がどう動くかという事であるため、明確には答えなかった。 第一、ルイズに対しても(半ば理解せぬ内にだが)命を拾われたという義があるので、今ここで答える事ではない。 この事において彼とタメを張れる人間は同僚でもあった白狼ことマツナガ大尉ぐらいなものであろう。 ちなみに、大抵の人が信じられないであろうが、アナベル・ガトーは25である。 一年戦争の時は22なわけで、一体どんなもん食ったらあの年齢でああいう風に育つのか甚だ疑問だ。 当然、ルイズ達にそう話した時もかなり驚かれた。 明確に答えなかったせいか、多少安堵したようで、しばらく黙っていると、寝息が聞こえてきた。 あろう事かブルーダイヤモンドを両手で握り締めたままだ。 価値を考えれば非常に罰当たりである。 「まったく…小動物でも飼い始めた気分だな」 言いながらルイズに毛布を掛ける。 士官学校時代でも、ここまで手の掛かる後輩は居なかったはずだ。 そういう意味では新鮮味のある体験なのだが、対応し辛いというのが本音だろう。 さて問題のダイヤだが、取れそうに無い。 無理に取っても良かったが、緩んだ表情で寝ているルイズを見てその気は失せた。 少なくとも朝になれば向こうから返してくる。 別段、起こすような真似はしなくてもいい。 「良い夢をな」 現実世界で『悪夢』を振り撒いていただけにそう口に出たのかもしれないが、事実として情勢は芳しくない。 近い将来、ここが戦火に包まれるというのは十二分に考えられるのだ。 なら、せめて夢の間だけでも悪夢なぞ見ないで済むに越したことは無い。 「私の杞憂であればいいのだが…」 少々弱気になりがちだが、切り替えは早い。 成すべき事を成す。 今も昔もそれは変わらない。 そう考えると、自身も夢を見るべく目を閉じた。 この先トリステインが見る夢が悪夢か否かは、まだ誰にも分からない。 翌日。 「ああ、僕のモンモランシー…君はいつだって美しいが、今日の君は一段と美しいよ」 行初めから、クベさん家のマ坊ちゃまでも言わないような仰々しい台詞を吐き出しているのは、ご存知ギーシュ。 そして、相手は金髪縦ロール。どこのディアナ様だと言わんばかりのモンモランシーだ。 この前、一年のケティに浮気され、思いっきりワインをブッ掛けた彼女であったが ここ最近、少しばかりマシになったのでヨリを戻しつつあった。 ギーシュ曰く『少佐に影響されたのかな』らしいが 先にあるように、アナベル・ガトーは世辞など一切言ったりはしない。 モンモランシーから見ても、ガトーとギーシュでは、その辺り雲泥の差があるので話半分だが 浮気性が治りつつあるというのは悪くない事だ。 トリスティン貴族の例に漏れず、高慢と自尊心の塊だけあって褒められるのは嫌いではない。むしろ、もっと褒めろと言いたげである。 食後のデザートとテーブルを介して、対面に座り、口説く側、口説かれる側と別れているが 唐突に、ギーシュの言葉が自分ではなく、他に向けられている事に気付いた。 制服っちゃあ制服であるが、ジオン公国軍少佐相当が着用する軍服に身を包んでいる、ガトーである。 まぁ、他から見て明らかに浮いているのであるが、本人は気にしていないし 何より、他に何があるのかと言われれば誰も答えようが無い。 「何か用か?」 「少し、話があるんですが、構いませんか?」 そう言ってガトーの方に顔を向けたギーシュだが、その目は貧しい少年が、展示されているトランペットを見るかのようなそれだ。 公国軍MSトップエースパイロットであるからには、そういう目で見られる事に関しては慣れきっているのだが 傍から見ているモンモランシーは、少しばかり不安になっている。 (…ギーシュったら、あんな目して…わたしにも見せた事ないわよ ……まさか!いやでも…まさかよね……ああ、でも最近他所の女の子に色目使ったりしないし…) なにやら、薔薇色の想像が湧き上がっているようであったが、無論二人は知った事ではないから話は続く。 「何だ?」 漢気溢れる声でギーシュに返すガトーだったが、ギーシュは何故かモンモランシーの方をチラ見しながら答える。 「ここじゃ少し…向こうで話したいんですがいいですか?」 「ふむ…まぁよかろう」 「それじゃあ、少し行ってくるから待っておくれ、僕のモンモランシー」 立ち上がってガトーに付いていくギーシュがモンモランシーにそう言ったが、言われた方は少し青褪めている。 (訊かれると拙い事なの!?何!?やっぱりそうなの!?) 接触したコロニーの内の一つである、宇宙の深遠へと消えていった『アイランド・ブレイド』の如くズレた思考をしていたが 何やら意を決した様子握り拳を作り立ち上がると、呟く。 「…追わなきゃ」 そうして、モンモランシーが二人を見つけたのはヴェストリの広場である。 火の塔と風の塔に挟まれ、日当たりも悪いので生徒も居らず、密談にはうってつけの場所だ。 茂みに隠れながら、二人に近付いたが、もう話は終わったようだ。 「ありがとうございます!参考になりました」 「あまり、助けになったとは思えんのだがな」 話の内容だが、何の事は無い。 砕けた言い方をするとギーシュの恋愛相談である。 無論ガトーとて、他人にアドバイスできる程そっちの戦歴は豊かではない。 むしろ、ギーシュがアドバイスするぐらいなのだが、この前ワインを頭からブチ撒けられた手前もあるのだろう。 どうも何か、ギーシュから完璧超人のように見られているが、そんな事は無い。 得手もあれば不得手もある人間である。 従って、まずはその目移りやすい癖を直せ。というごく一般的な回答だったのだが とりあえず、薔薇は云々と返してきたので『それは一人前の男の台詞だ!』という台詞と共に軽く修正しておいた。 どうも、一度痛い目見ないと分からないタイプであるようで、修正されると何かに気付いたような目で、先にあげた礼を述べてきたというわけだ。 「そう言えば、少佐って、召喚される前は何ていう所から来たんですか?」 唐突に、そう訊かれた。 はてさて、返答に少し詰まる。 宇宙と言っても、分からんだろうし、サイド3『ムンゾ』は少し違う。 したがって、最後に足を踏み入れた場所で答える事にしたのだが 「茨の園という基地だ」 そう言った瞬間、茂みから何やら音がした。 「む!?…猫か」 目を細めて辺りを見渡したが、帰ってきたのは猫の鳴き声だったので、視線を戻した。 別段聞かれても困る話ではないのだが、軍人故の条件反射というやつか。 無論、茂みの中に居るのは、猫などではなくモンモランシーである。 何やら、よよよと地面に手を付いて崩れ落ちている。 (やっぱり…!) 暗転した背景に奔る、一筋の稲妻。大きく見開かれた白目。額を奔る無数の細い縦線。 所謂、ガラス仮面ショックというやつである。 すこーし距離が遠かったので聞こえ辛かったのだが、最後のガトーの言葉が彼女の耳には、このように聞こえている。 即ち『茨』の『い』が消え、『薔薇の園』と。 「お、おかしいと思ったのよね…アナベルなんて女の名前だし…」 そんな事を言ったら、グリーン・ノアの狂犬に問答無用で殴られるのだが それは四年後であるし、殴られるのは転落不幸人生まっしぐらの幸薄い可哀想なエリート青年将校なので、特に気にしないでおこう。 まぁ実際のところ、その手の話はヤロー率が極めて高い軍隊内には付き物であるし こちらとは違い、女性パイロットやオペレーターが存在する公国軍内でも、そういうのはあるはずである。 無論、ガトーはそのようなご趣味は持ち合わせていないが、モンモンは突っ走っている。 モンモン自身は、一回だけガトーが髪を解いた所を目撃している。 正直、束ねている時とそうでない時では、印象というか、見た目というか、その辺りがまるで違う。 中の人だって、最初見た時は、『誰これ?今更新キャラ?』と思ったぐらいである。 そんなわけで、モンモンの頭の中では、まさに薔薇な展開がリプレイされている。 趣味悪いけど、一応、美少年と呼ばれる範疇に属するギーシュと そこいらの貴族など比較にならないぐらい、色んな風格が溢れ出ているガトー。 髪を束ねている状態であれば、いかにも軍人です。と自己主張せんばかりに鋭い目つきをし 逆に、髪を解いた状態で、どこか遠くを見据えている表情との、差がまた激しい。 ギーシュがそっちに目覚めたのなら、直撃というやつだろうと、泣きながらそう思う。 そして、絡み合う銀髪と金髪という脳内光景に、顔を非常によく赤らめさせるとモンモンが間違った決意をした。 「わたしが何とかしなきゃ…」 なお、これが後の『惚れ薬騒動』の原因である。 ほぼ一方的にとはいえ、この世界においてソロモンの悪夢が見せた初めての悪夢(精神的な意味で)であった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7636.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ 翌日、トリステイン魔法学院はま蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。宝物庫にできた大穴に ついては当然であるが、何より『あの』土くれのフーケが学院を襲撃したという事実が、開校以来 起きた事のない大事件である事を物語っていた。 そんな騒ぎの声が外から響く学院長室内で、オスマンは集まった面々を前にして口を開いた。 「ふむ、来てくれたようじゃの」 自分の前に並んだ九朔、タバサ、キュルケ、そしてルイズ達へと顔を合わせ――首をかしげた。 「はて、ワシが呼んだのは、二人だけだと思ったんじゃが――ワシ、ボケた?」 「ちち、違いますオスマン学院長! コイツ、クザクってばアタシの使い魔ですから! ですから! その、えっっと……そう、カントクセキニンがあったので!」 「タバサは親友なので、付き添いですわ」 慌てて答えるルイズ、しれっとした顔で答えるキュルケ。正反対の態度の両人の答えにオスマンは 大体を察したのか、あっそ、と言うと話をそのまま続けた。 「で、じゃ。昨日の事は既に知っての通り、この学院の宝物庫が土くれのフーケに襲撃された。 噂どおりご丁寧に、こんなものまで残しての」 そうして机の上においた紙には、クザクが昨日見た文面が綺麗に書き写されていた。 「さて。そういう事じゃが、まずは昨日のことを聞かせてもらえんかの?」 その言葉に、九朔とタバサが顔を見合わせた。 「私が話す」 「――ああ、我は構わぬ」 「じゃあ」 と、進み出るとタバサは事の次第を話し始めた。 「……なるほど、巨大なゴーレムか。しかも、見たことのない……後を追おうにも、消えるように いなくなってはのう」 眉間に皺を寄せて、オスマンは蓄えた白髭を撫でつけた。コルベールも、どうしたものかと禿げた 頭を撫でる。 誰もが黙り込む空気の中、また、九朔も思考する。 (昨日の道化師……あれが、フーケなのか?) 昨日からわだかまっていた酷い違和感がまた大きくなっていた。 見た事はないはず。 聞いた事もないはず。 会った事も無いはず。 その存在とは、何の接点もないはず。 なのに――――自分はどこかで、あの【道化師】と、出会った覚えがあった それはやはり、いわゆる既視感<デジャヴュ>だったのかもしれない。 それはやはり、ただの見当違いだったのかもしれない。 はたまた、元の世界で似たような大道芸人やピエロを見ただけなのかもしれない。 それならば上々――だが、そうではないと、否と告げている。心の何処かで警鐘を鳴らす己がいる。 あの、仮面。 あの、衣装。 あの、仕草。 あの、身のこなし。 あの、巨人。 あの、ヒトガタ。 思い出せない。決定的な何かが、大十字九朔の身には欠けていた。 考えども、解答へは辿り着かない。堂々巡りする思考の尾喰い蛇。 (我は何を忘れている……。我は……己(オレ)は―――) 「――な、なんですと! フーケの居場所が分かったのですか、ミス・ロングビル!?」 コルベールの素っ頓狂な叫び声が耳を打った。思考の海から引き上げられ、九朔は顔を上げる。 そこにはいつのまに現れたのか、緑髪の24、5くらいの女性が。 「ええ、はい。近在の農民に話を聞いたところ、近くの森に入っていく奇妙な人間を見たとか」 「どのような格好?」 タバサがロングビルと呼ばれた女性に尋ねる。 「格好は普通だったそうです。でも、道化師の仮面やら何やらを持っていたそうで……」 「昨日見たフーケは、道化師の格好をしていた」 タバサがオスマンへと顔を向ける。 「ふむ……フーケ本人である可能性は高い、か」 「コルベール先生、どうなるんですか?」 ルイズの質問に、コルベールは険しい表情を浮かべた。 「本来ならば、王室に届け、兵を差し向けてもらうべきでしょう。しかし……」 「王室に知らせている間に逃げられるじゃろうな」 コルベールの言葉をオスマンが引き継ぐ。 「ましてや、学院の宝物が奪われておるのじゃ。これが外部に漏れれば一大事、己の火の粉も 払えぬようでは、魔法学院の権威も地に落ちる」 「では、どのようにされるつもりなのだ?」 九朔の問いかけに、オスマンの瞳が鋭く細められた。 「捜索隊を編成し、フーケを追う。この問題、我等で解決する」 「でも、学院長。捜索隊を編成するにも、他の先生達は……?」 「残念ながら、ここにないという事実だけで察してくれ」 ルイズの質問に答え、情けないといった表情を浮かべてオスマンが唸った。 「できるものならばワシが行くんじゃが、ワシが出れば嫌でも目立つ。そうなれば、フーケには 逃げられてしまうじゃろう」 「では、コルベール先生はいかがですか?」 「私……ですか? 私……私は…………」 キュルケの問いに、コルベールの表情が揺らいだ。手は握り締められ、肩が微かに震えていた。 その表情には怯えにも似たものが見えた。 「…………」 「コルベール先生?」 「残念じゃが、コルベール先生にはワシの手伝いをしてもらわねばならん」 言いあぐねるコルベールの代わりにオスマンが答えた。 「じゃあ、どうされるんですの学院長? これでは捜索隊は編成できませんわ」 キュルケの言葉に一同がしん、と静まり返る。 そして、 「――私が行きます!」 その言葉に、視線がルイズへと一斉に向いた。琥珀の瞳は真っ直ぐにオスマンへと向けられ、凛と、 整った顔立ちが彼を見据えていた。 「ミス・ヴァリエール! 君は生徒ですぞ!?」 コルベールが叫ぶような声を上げた。 「でも、誰もいません。誰もフーケを追おうとはしてないじゃないですか!」 「それは……」 ルイズの言葉にコルベールは口ごもる。 「ミス・ヴァリエール。おぬしは大事な生徒じゃ。それに、御家族の件を考えれば……」 「それでは、私もいきますわ」 諌めようとするオスマンを遮り、キュルケが一歩前に出た。 「ツェプルストー、何でアンタが出てくるのよ……」 「あら、ご不満? でも残念。あなたが行くならあたしも行くわ。どうせ一人じゃ何もできない でしょうし? それに宿敵且つお隣同士ですし? 何よりヴァリエールだけが良いかっこしい するなんて許せないじゃない?」 「なんか、その上から見おろし視線と勝ち誇ったような笑みと言い草が腹立たしいわね」 不満げな表情をするルイズに、余裕と自信に満ち満ちた表情をキュルケは向けた。あざとい位に 勝ち誇っていた。というかルイズで遊んでいた。 「不安」 その横で、タバサも進み出る。 「あら、タバサもいくの?」 「友達だから」 「あ、あら、そう? ま、まあそうなら仕方ないわね……」 言葉少なに告げるタバサ。しかし、その言葉に微かに顔を紅くし、キュルケは頬を掻いた。 「では、おぬしらに頼んで良いか?」 「はい」 「もちろんですわ」 ルイズとキュルケが答え、タバサが頷く。そして、オスマンは九朔へも顔をあわせる。 「お主も良いかの?」 「ああ――我は構わない」 確信があった。あの道化師にもう一度相対すべきだと。何の確証もないが、現時点でそうすべきだと 己という存在の本質的な部分が告げていた。 それに―― (あの道化師。恐らくルイズらだけでは手が余る……いや、余りすぎる相手だ) 昨夜の道化師が纏っていた『見えざる力』ものを思い出し、九朔は表情を険しくした。 * 馬車はトリステイン魔法学院を離れ、ミス・ロングビルが見つけたという不審者のいる森へと 向かっていた。 学院からの距離は馬でおおよそ4時間程度、田園風景が馬の速度にあわせて流れていく。 屋根なしの荷車のようなものとはいえ、大きさはそれ相応、馬車の前にはルイズ達が、後ろに 九朔は腰掛けていた。 「やあ、クザク。先ほどから黙りこくってどうしたね!」 前方で騒ぎあうルイズとキュルケの声が響く中、なぜか、ギーシュが九朔に語りかけてきた。 「…………」 「おーい、クザク」 「…………」 「もしもーし?」 「ん……ああ、なんだ。デルフか」 ようやく気づいた九朔は、ギーシュへと振向いた。 「―――――」 眼の前のギーシュに一瞬沈黙。そして、 「――って、なぜ、お主が此処におるッッ!?」 叫んだ。 「何故って君を見かけたから来ただけだけだが、何か?」 あっさり平然とギーシュは答えた。 「汝…………我々がどういう目的で、何処に向かっているか分かっておるか?」 「ああ。なんだか、ヴァリエールがフーケの捜索をするとか言ってたが、なに、大丈夫だクザク。 このギーシュ・ドグラモン、今までの僕とは一味違う。まあ、安心したまえ!」 胸を張って答えるギーシュだが、不安を感じざるを得なかった。物凄く不安を感じざるを 得なかった。激しく、これ以上なく不安を感じざるを得なかった。 「って、おい。俺の事も忘れないでくれよ!」 「んむ? なんだね、その剣?」 ギーシュが九朔の隣に立てかけられていたデルフを見た。 「へっ! 知らねえって言うなら教えてやるぜ坊主! 俺の名前は――――」 「デルフリンガーだ。昨夜、オスマン老からもらった」 「へぇ」 「相棒ぉぉぉぉぉぉぉ―――ッッッ!?」 せっかくの台詞を取られ、デルフが絶叫した。 「ああ、すまん」 「謝ってくれるなら良いけどよ……まあ、良いや。それより、一体何考えてたんだ?」 「ああ、そうそう。それは僕も気になっていた。やはり、あれか。あの三人の中で誰が一番 であるかとか――ひでぶっ!」 ノーモーションの裏拳でギーシュを昏倒させると、九朔は手を口に当て少し考える仕草を見せた。 「特に何もないのだが……そうだな、デルフ。我が別世界の人間だと言えば、汝は信じるか?」 「相棒が別世界の人間? ふむ、そりゃ面白い話だな」 鍔を鳴らしデルフは答えた。 「信じるか?」 「そりゃ、信じるも何も相棒はそうだろ?」 さも当たり前だと言わんばかりのデルフの言葉に、逆に九朔が驚きの表情を浮かべる事になった。 「デルフ……汝、どうしてそうだと断定できる?」 「なぜって、そりゃ相棒。おめえが………………って、なんでだっけ?」 その答えに九朔は馬車の縁からずっこけかけた。 「な……汝、理由も分からずに答えたのか?」 「いや、ほんと何でだ? あれ? なんでだろ? ……やべえ、忘れちまった」 呆れ返って言葉も出なかった。が、しかし、デルフのその声色はウソは言っていないようだった。 「どういうことだ?」 「いや、6000年も生きてると色々忘れちまうもんなのよ、っていうかだな。お前さんがどうして 『使い手』だったか、っていう理由も思いだせんのよ」 「待て。いきなり知らん単語が出てきたぞ」 「あれ? お前さんが『使い手』だって言わなかったっけ?」 尋ねた九朔に、デルフはその鍔を鳴らした。 「聞いていない」 「そか。んじゃあ、忘れてくれ。思い出したらまた話すわ」 九朔の肩から力が抜けた。どうにもこのインテリジェンスソードは物忘れが激しいらしい。 「汝、刀身だけでなく記憶まで錆びついておるようだな……」 「はっはっは。小粋なジョークだな」 「冗句ではないんだがな」 苦笑いを浮かべながら呟いたのだが、それはデルフには聞こえていないようだった。 「ミス・ロングビル。本当に良かったんですか?」 「ええ、構いませんわ。お気になさらないで下さい」 ルイズの問いに、ミス・ロングビルは柔和な微笑を返した。 「でも、ミス・ロングビル。どうして貴女が手綱を? こういうのは普通、付き人がやるものだと 思うのですけど」 キュルケが御者席に身体を乗り出しミス・ロングビルに尋ねた。 「こんな御者の真似、貴族がやるものじゃありませんわ」 「はい。貴族ならそうだと思います……けど、私は貴族の名をなくした者ですから」 気まずい空気をルイズは感じた。が、当の本人であるミス・ロングビルは表情を崩さない。 「えっと……」 「ミス・ロングビル。そのお話、もう少し詳しくお聞かせ願えないですかしら?」 表情を崩さないロングビルに、キュルケが好奇の視線を送った。 「止めなさいよ、ツェプルストー」 非難めいた声にキュルケは隣のルイズへ視線を移した。 「何よ、別にいいじゃない。暇なんだし……ねえ、ミス・ロングビル?」 「別に良くない! アンタね、そうやって昔の事聞いたりしないの!」 「あーはいはい。分かったわよヴァリエール――代わりにダーリンのトコ行くけどぉ♪」 「ダーリンって……あ、こら! うちの使い魔に手をだすなぁ!」 馬車の後ろへと向かうキュルケをルイズは追った。すぐに、九朔の悲鳴が上がり、第二ラウンドの 鐘が鳴るが、タバサは一度そちらを見やった後、本へとまた視線を落とした。 しかし、タバサの意識は本には向いていない。これから戦う事になるであろうフーケへと向いていた。 昨夜の邂逅、あの後に怯えたままのシルフィードの言葉が焼きついている。 『せ、精霊がみんな怯えてたのね……ああ、あんなこわいの見た事も聞いた事もないのね……。 うう……おねえさま! あれと絶対たたかっちゃダメ! あれはぜったいにダメなのね!』 今まで、シルフィードがあそこまで怯えた事はなかった。まがりなりにも、彼女は風韻竜。 力のある種族。それをあそこまで怯えさせるフーケとは一体何者なのか。 微かな不安にタバサの無表情はより固くなる。 * 馬車をおり、六人と一振りは鬱蒼とした森の中を進んだ。昼間だというのに、薄暗く、黴と、 水の腐ったような臭いとが立ち込めていた。 それから暫くすると、急に開けた場所が眼前に広がった。暗い森の唯一そこだけが光が差し込む。 そして、おあつらえ向きに作られた廃屋が五人を待ち構えていた。 「怪しいな」 「怪しいわね」 「ああ、怪しい」 「井戸とかがあったら完璧ね、色んな意味で」 「あれば、落ちないように気をつけるべき」 人のある気配はなかったが、万が一を考慮して近くの茂みに隠れる。 「どうするの?」 「一撃離脱」 「つまり、奇襲だな」 「誰が適役でしょうか?」 「それができるのっってこの中で一番素早い人なんだけど」 全員の視線が九朔へと向けられた。もはや言うまでもない。 「…………ド畜生め」 「諦めなって、相棒」 なぐさめる調子で語りかけるデルフの言葉もやや虚しい。 「……仕方ない。後方援護は頼んだからな?」 杖をそれぞれに構える五人に一度振り返り、九朔はデルフを急ごしらえの鞘から完全に抜いた。 両手でデルフを握り、九朔は構える。左手甲のルーンが輝き、全神経が研ぎ澄まされる。 正眼から腰に、脇構の態勢を取る。前足に重心を取り、姿勢を低く取る。 「――――」 深呼吸。空気を肺から丹田に取り込む。そして、 「――――破ッッ!」 低く取った重心をそのままに、銃身から放たれた弾丸の如く駆け、 斬ッ―― 振り抜き、廃屋の戸を切り裂いた。瞬時飛び退き、相手の反撃に備える、が。 「誰もおらぬ…………ようだな」 廃屋の中は外見どおりの有様だった。外から見えるだけでも、埃の積もったテーブルと朽ちた棚 が見える。 やや逡巡したが、誰もいないかをもう一度確かめた後、九朔は全員を呼んだ。 「罠はない」 「みたい、ね」 タバサが杖を振り確かめた後にタバサが、続いてキュルケが入っていく。ギーシュは、外で 見張りを買って出た。 「ミス・ロングビル、何処へ?」 「もしかすると、此処にいないだけで近くにいるのかもしれません。辺りの偵察をしてみます」 ルイズの問いかけにミス・ロングビルは平然と答えた。 「一人で!? そんなの危険ですミス・ロングビル!」 「ならば、我が付いて行こう。それで構わぬか、ルイズ?」 ルイズの肩に手を置き、九朔が彼女の顔を見た。 「九朔……でも」 確かに、昨日、自分の身に降りかかった災難を思えば九朔に任せるのが一番良いのかもしれない。 万が一フーケに遭遇しても、最悪の状況は免れるだろう。 しかし、彼を側から離してはいけないと告げる声がしていた。それは焦燥感にも似ていたが、その 元が何かか分からない。 「…………そうね、アンタなら大丈夫よね」 だから、そう答えるしかなかった。 「では、すぐに戻る。行こう、ミス・ロングビル」 「はい」 二人が森の奥へと消えるのを、良く分からない焦りを胸に感じながら見送り、ルイズは小屋の中に 入っていった。 鬱蒼と茂った草を掻き分けて、奥へ進む。湿り、腐った水の臭いはどんどんと濃くなっていく。 日の光も段々と弱々しくなり、暗がりも濃密なものになっていく。 「ミス・ロングビル、大丈夫か?」 「ええ」 声をかけると、確かな返事が返ってくる。 しかし、小屋の周囲を回るような形で歩いてきたが、はたしてここまで来る必要はあったのか。 いや、ありえない。では、なぜ? 「――――ッッ!」 瞬間、全身の皮膚が粟立った。それは濃密な霊気を帯びた冷気。森という名の場が異質なものに 包まれたのを九朔は感じ取った。 九朔の瞳が、チューニングされたラジヲのように、大気に充満する霊気の流れを知覚した。 それは、先ほどまでは零であった。が、今は違う。濃密な、目が痛くなるような鮮烈な色を九朔の 瞳に映し出している。 それは奇しくも昨日、あの宝物庫で見たものと同質のもの。それが、突然溢れ出したのだ。 それも――あの、ミス・ロングビルの身体から! 「おい、相棒……!」 「分かっている……!」 即座に、鞘からデルフリンガーを抜いて九朔は構えた。 眼前のミス・ロングビルは歩を止めたまま、微動だにしない。だが、その身体からは、明らかに 先ほどの彼女のものとは――人とは思えない鬼気を滲み出していた。 「――一瞬でばれちゃったかぁ」 ロングビルが九朔へと振向いた。その顔は微笑を浮かべている。先ほどと全く変わらないその表情は、 だからこそ余計に、纏う殺気を際立たせていた。 「ねえ、坊や?」 甘く、絡みつくような声がロングビルの口から漏れた。 「んふっ。ねえ、期待したかしら?」 「……何をだ、ミス・ロングビル――いや、土くれのフーケ」 全身の緊張を解く事無く、答える。間合いは充分、何が起きたとしても対応の取れる距離だ。 「何をって……ナニに決まってるじゃなぁい☆ あらあらぁん、もしかして怖いのかしら? ふふっ、でも仕方ないわよねぇ。アタシ、フーケだし。でも、怖がらなくても良いのよぉ~? だからぁ、おねえさんとぉ――――い・い・事・し・ま・し・ょっ☆」 ぬめりを帯びた微笑が、凄惨なものに変わる。 「――【妖蛆の秘密】(デ・ウエルミス・ミステリイス)、喰らいなさい」 気づかぬ間に手に収められた鉄の表装のついた黒い大冊、【妖蛆の秘密】がページをひとりでに めくった。そして、圧倒的鬼気が九朔へと放たれる。 「――ッ!」 「相棒ッッ!」 本能が警告を発した。大地を蹴り、九朔はその場から飛び退く。同時、今までいた場所に 触手が地を割って飛び出した。 ――いや、それは触手ではなかった。 「蛆!?」 口腔から生え揃った牙を剥き出しにした蛆が九朔へと吼える。 「あらぁん。オトコノコってばやっぱ突かれるより突くのがお好き~? でもね、新世界を 見る事も人生経験には大事なのよぉ? だからぁ……」 フーケが腕を横凪に振った。 「目覚めさせてあげるわぁん☆」 軌道に沿い、大量の蛆の触手が大地を破って突き出た。 「うおおおお!? 触手プレイか!? 相棒、これは触手プレイかぁぁ――ッッ!?」 「ええい、そんな事、我が知るか!」 次々と地面から生える蛆をかわし、かわし、避ける。が、前方、突き出た何対かが九朔へ牙を剥いた。 しかし、 「破ァァッッ!」 デルフリンガーの一振りで一刀両断の元に絶命させる。 「アァン! たまんない! たまんないわぁ! もう、全身キュンキュンしちゃう!」 「ちぃ……っ!」 迫り来る蛆を切り伏せ、薙ぎ、避ける――一向に埒が開かない。 「ほらほらぁ。も~っと頑張らないと蛆ちゃんに何処もかしこもズッコンバッコン穴だらけ にされちゃうわよぉ~? んふふふ~~☆」 高笑いをあげるフーケに九朔は心の中で舌打つ。 「おいおい相棒! このまんまじゃあ、マジで穴ボコにされちまうぞ!?」 「分かっておる!」 「どうすんだよ!?」 駆けつつ、九朔はデルフの錆びた刀身に手のひらを押し当て真横に引いた。 「――こうする!」 血が手を濡らす。 「血こそ我が存在。我が魔力の証明。我が魔術の源泉……!」 式を組み立てる。術式を編む。血液に含まれた情報がワードによって再構築される。 放物線を描き血液は大地へと落ち、地中へ根を張った。 そして、 「喰らえ――ッッ!」 九朔はデルフを大地に――否、岩に叩きつけた。 火花が飛び散り、血液へと引火する。瞬時、連鎖した発火が導火線となり、炎が蛆を飲み込む。 ――GYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAAAA! 全身を焼かれた蛆が、悶絶の叫びを上げる。火を振り払おうともがくが、もう遅い。魔学反応を 起こした火炎は蛆を燃やし尽くす。 「ちっ!」 フーケから余裕の笑みが一瞬消えた。それを見逃さず、九朔は一気にフーケへと肉薄した。 「破ァ――ッッ!」 脇構え、刃を逆向きに。滑る剣閃は相手を昏倒させるため。九朔はフーケの左脇腹へと 峰を叩き込んだ。 しかし、 「ダメじゃない坊や~。オンナノコだからって簡単に手加減しちゃったらぁ」 固い金属の感触が九朔の手を震わせた。刃はフーケのローブの両腕の先に出現した歪で巨大な カギ爪に防がれていた。そして、フーケのローブが、一瞬の内で昨夜の道化師の衣装に変わった。 「いくわよぉ?」 顔を仮面が覆い、死刑宣告を告げた。空いた右腕、フーケの巨大なカギ爪がギロチンのような 無慈悲さを持って九朔の頭へ迫る。 「――くっ!」 一気に飛び退く。前髪を数ミリ削ったが、寸でのところで九朔はフーケのカギ爪を回避。 が、しかし、振りぬいた右腕はそのまま大人ほどの太さを持つ木の幹を容易く抉り取った。 「お、おっかねえ……!」 「直撃を喰らったら即死か……!」 「あらお上手☆ でも――それで安心しちゃダメダメよッ!」 笑いの表情を浮かべた仮面の奥からフーケの声が響く。両腕のカギ爪が再び九朔へと迫った。 「死ァッ――!」 交差に薙がれたカギ爪の一撃を引き下がりながらデルフで受け止めた。 「ぐぅっ!?」 「ぬほぉぉ!」 完全な一撃ではない。にも関わらず、その一撃の重みは生半可でなかった。。 「ほらほらぁ☆」 横一文字。 「もっとよぉ☆」 縦一文字。 迫り繰り出されるカギ爪の一撃一撃が、死の脅威を持って九朔を襲う。楽しげに笑うフーケとは 裏腹に、焦燥ばかりが募る。 「くっ! 埒が……開かん!」 「これじゃあジリ貧だぜ、こん畜生め!」 そう言っている内にも、カギ爪は容赦なく九朔達へと向かってきていた。 そして、 「ぐぅっ!?」 遂に、九朔の身体がバランスを崩し、膝をついた。 「あららぁん、坊やったらご愁傷様ぁ~~☆」 それを見逃すはずもなく、フーケが迫る。カギ爪が大きく振上げられ九朔へと振り下ろされた。 ギロチンの刃が、九朔の首を狩らんとする。 「それじゃあ……バイバイねッッ!」 だが、次の瞬間、崩れたはずの九朔の身体がフーケの間合いの内側に一気に踏み込んでいた。 「な――――ッッ!?」 勢いのついた身体を止める事は出来ない。進行方向に置かれた柄頭へ突っ込む体勢、それに合わせて 更に己の速度を加え、九朔は柄頭で強かにフーケの仮面を打った。 「きゃぁぁっっ!」 甲高い音を立てて、仮面に大きな皹が入る。脳を揺さぶられたか、そのまま大地へとフーケは うずくまった。 「おっしゃあ! やったぜ、相棒!」 「いや、まだだ。まだ、気を抜くな」 うずくまり動かないフーケに、九朔は警戒を解く事無くデルフを構えなおした。 「う……ぅぁぁ…………」 うめき声が仮面から漏れた。仮面を押さえ、フーケがゆっくりと立ち上がる。 「な、なんだ?」 「うっ………ふ、ぐぅ…………!」 割れた仮面の隙間から、フーケの顔が覗く。それは、常人のものではない、狂喜に犯された瞳。 だが、それが―― 「い…………や…………」 ――不意に揺らいだ。 「た…………す…………け…………」 掠れた、今にも消えそうな声が、フーケの口から漏れた。口を懸命に開くが、それ以上声が漏れない。 「お、おい? どういうこった?」 「いや、我にもわから…………ッッ!?」 全身を再び、おぞましい悪寒が襲った。それも、先ほどまでの比ではない、圧倒的なレベルで。 ドサリ―― 眼の前のフーケから、鉄の表装がついた大冊が零れ落ちた。ただ、それだけ。それだけのはず。 だが、その書から、その悪寒の根源が発せられていた。 「な、何かすんげえヤバイ感じだな、おい……」 「…………」 指先ひとつ動かしてはならない、そのような気配が在った。下手に動けば取り返しがつかない、 そのような気配が在った。――それほどまでに、危険なものを、その書は発していた。 動かないフーケ。零れた書。終わらせるならば、今しかない。だが、九朔は動けなかった。 なぜなら、【まだ、全ては始まってすらいなかった】のだから。 ――――ごぼり―――― 書が音を立てて膨らんだ。いや、膨らんだのは書ではなかった。 【書の内側から】溢れ出た何かが、そう見せていたのだ。 「うっ……!?」 腐臭がその書から溢れ出た。 瘴気がその書から溢れ出た。 糞尿にも似た、吐き気をもよおす臭気が溢れ出た。 肉がその書から溢れ出た。 臓物がその書から溢れ出た。 骨がその書から溢れ出た。 重なり合った、不定形の肉塊が外へと溢れ出た。 そして、 「――――――ぁ」 フーケを、その肉塊が取り込んだ。 「なっ!?」 「な、なんだそりゃあああああ―――ッッッ!?」 それはフーケを中心に、書をも飲み込むと急激に膨れ上がった。腐肉の海。それは更に膨れ上がり、 木々を薙ぎ倒し、取り込み、肥大していく。 その異様な光景、不定形の肉塊が見る見るうちに周囲を侵食し――喰らっていた。 「相棒、こりゃマジやべえ! なんていうか、ビリビリしやがる!」 「分かっている!」 その場を離れるしか選択はなかった。肉塊のタールに追いつかれないように全速力で駆ける。 しかし、不意に、その腐肉の集合体が動きを止めた。 「……なんだ?」 ゴゴゴ―――! 肉塊がせりあがる。腐れた肉を分割し、分割し、腐れた臓腑でそれを繋ぎとめて一つの形へと 変じていた。それは大きなヒトガタ。有機と無機を組み合わせた、醜悪にしておぞましい 異界の工芸品。 30メートルはあるだろうそのヒトガタは、昨夜見た、あの有機と無機の巨人に似ていた。 そして、それが、九朔を見た。 瞳も何もないはずなのに、それが自分を見たと、確かに感じた。 RRRRrUUUUOOOOOOOOOOOOOOOhhh―――!! 汚濁した肉を震わせ、それは吼えた。悪意と敵意と殺意が込められた咆吼だった。 それは圧倒的なまでに絶望的な光景だった。 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~
https://w.atwiki.jp/shachozero/pages/114.html
471 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 39 42.06 ID rPFUBLma0 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l 「……スカーフか」 ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 478 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 41 29.18 ID rPFUBLma0 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / l ! | 伐_j f以ヽ彡イ 「はい、すぐに渡せるものはこれくらいしかなくて…… ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | セトさまがいつも見ていたのはメイドの私でしたから Vl | { l メイド服のスカーフを取り外しました l ! l 、 ー .イ , __ ……もらっていただけますか?」 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 485 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 43 19.94 ID rPFUBLma0 │ / / / | \ \ l l ヽ レ l / / l \ ヽ l | l l l ヽ/ / l | ヽ | | | | i| l l\/ |l \ ヽ l l | | | | /| l | l\ 八 ヽ ト、 l |\ヽ | | | l /│! l| |k_ \{ヽ } l ヽ l | | ハ i l | | ヽ/ ノ∧ イ≧fテ气ミ ヘ ハ ./ l│__j_l_!.」__ ∨ | | 「あ、ずるい! 〃 ヽ { |iヘ_イi ハ ∨厶斗<丁! / リ │ ` , | | ……じゃあ私は……杖、あげるわ \ N lr j , } /// 之fテ气千≦k | / / ! | ……メイジにとっての命をあげるんだから、大事にしなさいよね」 | /. } ゝ--′ // |iヘ_ ハ ヾX/ / / ! イ/ ,′. . . . l_ j 〃∧ / / | / / i{ ノ r / / ./ / l | / / 人 ` ヽ ′ / / / | l / / / \ __ . . . . / / / l 人 / / \ V`ヽ / / l \ / / lヽ、 ヽ ノ / / / i \ l ∧ / 丶 _/ / / ヽ ヽ | / ヽ / / // \ __, .r</ / /_,ィ7_ -―― - 、 l ,′ ヽ / / // \/ / / // ヽ 489 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 44 42.59 ID rPFUBLma0 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l 「余計なものを…… ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l まぁいいだろう。この程度なら邪魔にはなるまい `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l ……ふぅん。長くしゃべりすぎたな」 `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 497 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 46 13.01 ID rPFUBLma0 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / l ! | 伐_j f以ヽ彡イ 「セトさま……」 ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | Vl | { l l ! l 、 ー .イ , __ 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 502 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 47 47.14 ID rPFUBLma0 __ _, ´ `丶、 / \ / , / / / ヽ `ヽヽ l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/ | l Vf゙仡圷/ jl ノィアト、ヘ// / 「……もう止めないわ j l l V_ ソ ´ V リ /jイノ でもね、覚悟しておきなさい! , ハ ヘ. ` , l ! 近いうちに絶対にまた召喚してやるんだから!」 / / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ // ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ / / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ / /./ /¨} ,__∧_j_l ハ \ }/ ,′ l { / / / ヾ ☆Y ハ X { V r / / \__j 入xぅ/ \ ヽ l { / / V //∠ , } ! j/ / ! ∧V _二} ヽ / / / { 〈 l / | j/ -ーソ ノ / / / |ヽ \ l /∠/j rテ 〃 ( ヽ , . / / 、__jノ ∧{ / ,/ { _/ ハ `ー彡 / 〃 、__ > / ;> ´ /! ∨ヘ ヾ \ < _ ヽ {{ =ァ 彡< / { く{ ヽ ヽ ユ=― ´ 508 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 49 26.27 ID rPFUBLma0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! 「ふぅん。期待せずに待っていてやろう…… . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! では、行くぞ」 / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 512 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 51 15.96 ID rPFUBLma0 , -─- 、 , -‐- 、 ,, - `V `‐、 / \ ./ \ / ヽ ./ / l ヽ / / / / ./ / l | .l .lヽ | l. l / / / ./ .l | | l / / l l.〉 l、 | | l / / ./ ./ |. l | ./ ./ ./ | |./ l、| | l // ///| l / / //// / / . 「俺は『異次元からの帰還』を発動! l、l | /l///_/ l / //_|/_∠| / | / . 次元を越え俺を元の世界へと戻すがいい!」 /⌒ヽ | \ `ー ゝl // `ー /|/⌒v | l⌒l l|  ̄ ̄ //|〉 ̄ ̄ ̄ .|/^_l.l ヽゝ(ー| /| ´ \| ll ),l ノ lヽ_ / | ┌───7 /._/ .l/ | l ̄ ̄ ̄/ / / ,ノ! / |.. V´ ̄∨ ./ /,.-‐ .| ./ (;;) |\ `ー‐ ´ / / | | _|_\ /| ./ | (| ,.-‐ | \__/ .|/ _,.-─; |/ .(;;) |─────┤ _,.-‐ /  ̄ | |^l / 514 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 51 47.10 ID rPFUBLma0 / / / / ./ { 丶 \丶、 l . / / .| | | ./ ヽ l 八 _ ヽ }\ \ \ │ {/| l | レl┼─\l { -ヘ ヾ斗七7 ̄\ ヽ l l | j∧ . | 乂Vァ≧≠=kz∨ヽ Ⅳz=≠テ≦、 ∧ | l | lヽ ヽ ヘ 〃 fて ,ハ } . . / fて ハ }ト } j ∧. .| 「……セト!」 } |\\ .|ヾ 弋っ;辷リっ j// c辷う少 〃 // , ヽ! . / ハ  ̄ {ヽ( う¨¨´ , `¨¨( つイ ∧ \ / , O° ′ l◯ , ヽ \ / ◯ , _ __ ,′ / \ / ∧ ヽ /´ `´ `ヽ / / \ \ , / ∧ \ { } ィ´ ∧. \ ヽ i / _;/ ∧ > `ー一 ー‐ _< ., ゝ、 丶 , { ´ / ヽ \ > 、_ <// l \ .ヽ ∨ _/ , ヽ \ / / | \ ヽ / /´ } ∨⌒∨^ヽ /. ! ヽ } { { j }. /⌒ヽ ∨ { } , 517 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 52 13.18 ID rPFUBLma0 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / l ! | 伐_j f以ヽ彡イ 「セトさま!」 ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | Vl | { l l ! l 、 ー .イ , __ 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 524 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 52 51.79 ID rPFUBLma0 . / / .,、, ,r ,r ,.,i .l l .ノ l. -, ~ lr, ‐、 i ヽ.= , ~ ‐、 . ‐, i , 「さらばだ。ルイズ。シエスタ」 i, / ‐= ‐- ;-,_, 、, , ノ - /. ヽ、, 、.i~ ,= ` /、_ , 、 .r =, _ 、, ./ ‐、 ./ -、 ‐‐ッ ./ , 、 ツ / ‐i / /.,r -, - / ノi ‐ 、 / ‐ i, ,ィ / ,ィ ./ / i ` , ゝ〇y / ,.r ./. i ,ィ i ,ィ ノ ,./ l ./ l / y ,,, - 、,_ l. / l./ i ./ ;;- 、,,_ !、 l / l ,ィ , 、、, ‐! ,@ l,ィ ノ i‐/ ・l,.ィi ,r r -、__, , r ;;;;;;,r 531 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 54 01.92 ID rPFUBLma0 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / l ! | 伐_j f以ヽ彡イ 「……本当に、行っちゃいましたね」 ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | Vl | { l l ! l 、 ー .イ , __ 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 536 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 54 57.59 ID rPFUBLma0 rく! / / ! ヽ \. V勹! ∧| ! ! ! ∧ ! ∧ ! ! ∨ ! ! | ! !斗ヤT¨ヽハ T T ナト|、 ! | | | | ! | 斗=zミ | /,zぇ=rミ.レ| / .! | V!\|〈. {く _ハ ´ {く心! 〉厶イ .! 「……ええ」 / / | | トヘrリ トヘrリ / ! ∧ , / ! ハ ¨´ 、 `¨` / /!. ヽ / | ハ / / ! \ . / | > 、 ´ ` ,. イ / ! \ / /| ∨ !{r 、,. イ i / | ! \ / / ! ∨/^^^^^^^! / | ! \ 540 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 55 52.53 ID rPFUBLma0 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / l ! | 伐_j f以ヽ彡イ 「これからどうします? ミス・ヴァリエール」 ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | Vl | { l l ! l 、 ー .イ , __ 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 551 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 58 14.14 ID rPFUBLma0 ,. -―- .._ _,,.. -―‐ 、 / ``丶、_ _,,... -‐ァ ´ ヽヘ、 . / /´ ̄`ヽ_  ̄__,,. / / ̄__ \ /i ´ _ _ /´ `丶、 ´ / /´ ヽ . / l/_____/ ` ー‐ ´ ,.// 〃 ,.. , / |/´ /| ,. ´ ̄  ̄´ /// ii_ / / ,. ,.イ ! | {/ 〃 ,. - _,// |/¨フヽ// / ノ ,, ,′ 「……そんなの決まってるわ」 | / ,|l / _,. -‐ ´/| , イ示c、{ハ /_,∠.../_〃/ ノ | / / jj / /´ __,/ ! l トゞヨゾ` ヾ ,厶rく , / _,ノ | / ,′,. -―<_ _,,..‐ァ′丿j . 込ソ/, / ,.イ | /\ / 〈 / ̄ _ __,ノ\ 、_ _ . / // { ハ{ )/ ∧ ,. -‐ ´. . . .\ .\_`ーrrrァ7´/ ,′ \∧/ | 〃 } ,.ィ ´. . . . ._. __. __. . .`ヽ/⌒ヽ ∨ /! ( __ / }__,人 { |/ { . . ,. . ´. . . . . . . . . `丶、}、 丿. \ ) \ ノ--ーヘ!`ァヘ. ∨. . . . . . . . . . . /´ ̄``<. . . . . . .\ ) __,/ /. .ハ \ . . . . / `<. ̄´\ / 553 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 58 43.40 ID rPFUBLma0 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / l ! | 伐_j f以ヽ彡イ 「くす……なんとなく想像が尽きます」 ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | Vl | { l l ! l 、 ー .イ , __ 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 566 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 01 02 51.69 ID rPFUBLma0 _ , -‐ ´ `ヽ / `丶 / ヽ / / / 、ヽ ヽ 、 ハ { , i_i」Li 、 L,」__ } } | l { i´lzL」_ト、 iソリ_」Lリ` l l 「ええ! 絶対にあいつのブルーアイズの力を越えるメイジになって ∧ヾ〈.代ラj }ノ .代ラj.〉! / ト、 あいつの驚いた顔を拝んでやるんだから! / 〉 ヘ ゞ- , ゞ- / ト、 \ そのときを楽しみにしてなさいよ!! 〈 / .iヘ r‐‐y イ / ヽ } セトォォォーーーーー!!!!!!」 ___ ) / / /`ト ,_‐ _,.イ/ ∧ \_ ノ . /´ ̄ __ノ / { /i/ ,r‐ 7´ ! ヽ `ヽ、 { /´ _,.イi ! |不,/´{ | } ヽ _ ヽ } / /ヽ、,_!|,/_, -ヽ ヾ / ノ ((__ノ__,ノ } ヾ ;/ ,.不ニ ;; _;; ゝ, ∨ / 社長がゼロの使い魔の世界に召喚されたようです 最終回 ~青眼と虚無~ 終了 前へ トップページ 次へ